日本は少子化が進む一方で、世界一の超高齢社会に突入している。佐賀県東部のみやき町では、超高齢社会の課題解決を目指して、産官学連携の予防医療プロジェクトを開始した。その企画者であり福岡ハートネット病院循環器内科部長、同町地域医療推進政策顧問の野瀬大補氏に、同町の取り組みと成果について聞いた。
佐賀県みやき町在住の60歳以上の高齢者を対象にした、予防医療プログラム「みやき健幸大学」を2022年度からスタートさせました。同町の事業として、福岡大学、佐賀大学、公文教育研究会、鳥栖三養基医師会などの協力を得て実現したプロジェクトで、高齢者の健康維持・増進と、健康リーダーの育成を目指しています。
具体的には、脳機能向上講座、運動機能改善講座、健康講座を組み合わせた50分60コマ、計14週間のプログラムです。受講生には、週2回、町内の市村清記念メディカルコミュニティセンターに通学してもらっています。このセンターは、同町(旧北茂安町)出身で、リコー三愛グループ創始者の市村清氏を記念し、「健幸長寿」のまちづくりを進める同町の拠点として2021年に開設されました。
脳機能向上講座では、公文教育研究会の教材を使い、簡単な算術演算や100の数字盤などを使った脳機能トレーニングを行っています。簡単な計算や数字を順番に並べる比較的単純な作業ですが、受講生はゲーム感覚で楽しんでいるようです。
また、運動機能改善講座では、トレーニングジム機器を用いて、大腿四頭筋、外転筋、内転筋、大胸筋などを鍛える筋肉トレーニングを1回約30分実施してもらっています。運動プログラムについては、近隣の基幹病院の新古賀病院(福岡県久留米市)と連携しながら作成しました。受講生は、メディカルコミュニティセンター内のジムを無料で利用できるようになっており、この講座とは別日に週1回以上の筋トレをすることを推奨しています。
そして、健康講座では、糖尿病、心臓病、膝の痛みの原因、筋力を維持することの重要性などについて、福岡大学医学部の各科の教授陣や佐賀大学、鳥栖三養基医師会の先生方などがボランティアで授業をしてくださいます。このほか、栄養士によるサルコペニア予防のために必要な栄養摂取の仕方、薬剤師による薬の話などもあり、高齢者が興味を持てるような内容にしています。