本書は,産業医活動において,臨床医がカルテを書くことと同じくらい重要な「報告書・意見書の書き方」をとてもコンパクトにまとめてあり,産業医をこれから始める方や,始めて間もない方には特にお薦めしたいです。
まずは,産業医活動において報告書を書くことの重要性について伝えたいと思います。「書類がないことはやっていないことと同じ」,というのは私が産業医のトレーニングを積みはじめた当初に何度も言われたことです。つまり,労基署や裁判所,監査などでは書類がないと実施したこととして認められないということです。職場巡視の報告書や,衛生委員会での発言を議事録に残してもらうことと同様に,産業医面談についても確実に書類を残すことが重要だと言えます。
面談の内容を上司や人事担当者に伝えるときには,ついつい口頭で済ませたくなることがしばしばあると思います。とかく,嘱託産業医のように訪問時間が限られていれば,口頭伝達で済ませてしまいがちです。しかし,口頭伝達はコミュニケーションエラーを起こし,トラブルの元になります。それは,産業医にとってもリスクになりえます。そのため,面談をした際には,原則として何らかの形で書類を残すことが産業医には求められます。
産業医の面談で書類を残すことについては,種々の指針やマニュアル,手引きが厚生労働省から出されています。しかし,分量が非常に多く,とてもじゃないのですが読み切ることは容易ではありません。特に,産業医をこれから始める方には頭に入って行きにくいのではないかと思います。
一方,本書はそれらの情報をコンパクトにまとめ,分かりやすく図示していますので,とても理解しやすく,実際の産業医活動にも活かすことが可能なのではないかと思います。産業医をこれから始める方や,始めて間もない方に本記事をお読み頂ければ,より的確な「報告書・意見書」を作成できるのではないかと思います。