医療機関の顧問弁護士として,相談が最も多いのが実は問題のあるスタッフへの対応です。問題スタッフがいると,院内の人間関係が悪くなったり,患者さんへの対応が悪くなったりと,きわめて影響が大きいので注意が必要です。
そんなとき,どうすればよいでしょうか。
「問題スタッフを解雇することで対応可能」という言説も巷に溢れているようですが,実はかなりリスクが高い対応です(「解雇をしたが,たまたま紛争にならなかっただけ」と考えたほうがよいと思います)。
解雇に潜むリスクや,問題スタッフへの対処法について考えていきましょう。
先ほど,解雇はリスクが高いと説明しましたが,具体的に何が問題なのかを紐解いていきましょう。
解雇については労働基準法16条で「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする」と定められています。
法律の条文はいつも難解ですが,要するに「よっぽどのことがないと解雇はできません」と規定していると理解して頂ければと思います。たとえば,クリニックのお金を横領し,その金額もきわめて多額といったケースでは,解雇が有効になることが多いでしょう。しかし,ちょっとミスが多い,患者さんへの対応が不十分といった程度では解雇できないというケースがほとんどなのです。