医療機関の経営コンサルティングなどを手掛ける株式会社メディヴァが、中小病院を「コミュニティ・ホスピタル」にリポジショニングする事業に本格的に乗り出したことがこのほど分かった。既に都内と茨城県内の2つの病院(同善病院、水海道さくら病院)をコミュニティ・ホスピタルに転換・運営しており、今後10年間で60病院を再生させる方針だ。
コミュニティ・ホスピタルへの転換事業は、経営状態が悪化した中小病院や後継者不在の中小病院を、地域包括ケアシステムの中核である在宅医療の担い手として生まれ変わらせるのが目的。メディヴァの100%子会社株式会社シーズ・ワンが担当する。事業を推進するため、東急不動産ホールディングスや東京きらぼしフィナンシャルグループなどから出資を得て、総額15億円の資金を調達する。
中小病院のポジショニングには①専門特化急性期型、②急性期志向型、③回復期特化型、④慢性期特化型、⑤ケアミックス型─などがあるが、特に急性期志向型は大規模病院と競合する領域が多いため、地域で生き残るために他のポジショニングへのシフトが求められている。
メディヴァは、コミュニティ・ホスピタルをケアミックス型の発展形として位置づけ、「入院から在宅までを一連の流れとして広くカバーする」病院と定義。地域貢献に主軸を置いて在宅医療に積極的に取り組むことで、収益構造をより強固にできるとみている。
シーズ・ワンは、コミュニティ・ホスピタルに転換した個々の病院のDXなど各種機能を共通インフラ化し、経営の質と効率を向上させる事業も進める。さらに、一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会(理事長:武藤正樹元国際医療福祉大教授)と提携し、コミュニティ・ホスピタルに必要な総合診療医などの人材育成も進める。
同協会理事で藤田医大総合診療プログラム責任者の大杉泰弘氏は「200床未満の中小病院は総合診療医の研修先や働き場所としてはこれまであまり注目されていなかった。総合診療とコミュニティ・ホスピタルとの出会いは、今後の医療を変革していく可能性を秘めている」とコメントしている。