株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

本態性振戦へのMRガイド下集束超音波治療について

No.5170 (2023年05月27日発行) P.52

望月秀樹 (大阪大学大学院医学系研究科神経内科学教授)

登録日: 2023-05-24

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

本態性振戦がひどく,日常生活に支障をきたしている患者がいます。神経内科にてβ-ブロッカーやベンゾジアゼピン系薬を処方しましたが,まったく効果がありません。最近,脳外科的に集束超音波で大脳基底核を凝固する治療法があるようですが,これについてご教示下さい。
(東京都 F)


【回答】

 【穿頭せず,超音波を集束することで熱により視床Vim核を凝固する治療法。合併症のリスクを低減できる】

ご質問ありがとうございます。振戦の治療は,ご指摘の通り,薬物治療が基本です。しかし,効果がないときには,外科的治療を行うことがあります。

古くは1947年から現在まで,定位脳手術を用いた視床凝固術で振戦の治療が行われています。また,心臓のペースメーカーのように,手術により視床へ直接“リード”という刺激電極を挿入して治療する,脳深部刺激療法という治療法もあります。

「MRガイド下集束超音波治療」(図1)は,視床凝固術の弱点を克服するために開発されたMRガイド下で,治療ターゲットを特定し,周辺部位への悪影響を最小限にとどめつつ,穿頭せず,超音波を集束することで熱(50~60℃)により視床Vim核を凝固する治療法です1)2)。対象疾患は,薬物治療で十分な効果が得られない本態性振戦,もしくはパーキンソン病の振戦となります。

治療中,組織温度の変化を測定するために行う特別なMRスキャンによって,ターゲット部分の温度マップが得られます。そして,進行中の治療状況をモニターすることで,熱凝固が計画にしたがって進んでいるかどうか,確認できます。この治療は,定位放射線治療と異なり電離放射線を使用しないため,腫瘍形成等の放射線による合併症のリスクがありません。頭皮切開や穿頭が不要で,脳に電極を挿入することもなく,低侵襲性です。このため,脳内出血や感染による合併症のリスクが低減されます。また,脳深部刺激療法と異なり,インプラント埋入される機器がないため,機器の不具合やインプラントに起因する合併症のリスクがなく,バッテリー交換等の定期的な機器メンテナンスや日常生活上の制限も不要です。

既に,本態性振戦およびパーキンソン病の振戦で,薬物療法では十分な効果が得られない症状の緩和に対して,保険適応となっています。ただし,甲状腺機能亢進症など治療可能な内科疾患との鑑別が必要です。そのため,日本脳神経外科学会の「適正使用基準」による患者選択基準は,十分な経験のある脳神経内科医および脳神経外科医によって対象疾患として診断されていること,と記載されています。振戦の治療に難渋する場合,お近くの脳神経内科医か脳神経外科医に相談して下さい。大阪大学医学部附属病院では神経内科・脳卒中科,もしくは脳神経外科が相談に対応させて頂きます。手術に適応がある場合には,彩都友絋会病院にて治療を行っています。

【文献】

1)Elias WJ, et al:N Engl J Med. 2016;375(8):730–9.

2)Abe K, et al:Neurosurgery. 2021;88(4):751-7.

【回答者】

望月秀樹 大阪大学大学院医学系研究科神経内科学教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top