少子化が進む中、小児医療の需要や仕事内容には、どのような影響が生じているのか。日本小児科学会の専門医を対象に、勤務実態などに関するウェブ調査を行った同学会専門医制度運営委員会委員長の高橋尚人氏に話を聞いた。
いいえ、現段階では需要は減っていません。大学・小児病院、周産期・新生児、二次・三次医療分野では、むしろ、小児科医が足りていない状況です。
日本小児科学会専門医制度運営委員会は、小児科専門医の勤務実態などを明らかにする目的で、2021年3月~2022年3月に全国調査を実施しました。小児科専門医と小児科専攻医など計4612人の回答があり、有効回答数は4160人でした。そのうち小児科専門医3559人(同専門医全体の21.5%)の回答を分析したところ、41.7%が過労死レベルの週60時間以上(年960時間の残業)、10.8%は週80時間以上(年1920時間の残業)の長時間勤務を行っていました。
特に、大学・小児病院では週60時間以上の勤務者が62.3%、週80時間以上が18.9%でした。小児科専門医の勤務日数は平均5.43日/週で、55.6%が週6日以上勤務、6.7%は週7日勤務、つまり休日がまったくない状態でした。
また、小児科専門医の43.6%がオンコールを担当しており、月5回以上が24%、休養日が月2日以下という医師が20%もいました。診療所で働く専門医も含まれ、勤務時間だけでは測れない、拘束時間の長さが浮き彫りになりました。
医道審議会の医療従事者の需給に関する検討会は、現在年間550人程度養成している小児科専攻医を、2030年には100人以上、2036年には150人以上削減する方針を2019年に示しました。しかし、これは、子どもの数の将来推計と、子育て中などで短時間しか働けない小児科医も含めた平均労働時間をもとに算定した数値です。長時間労働を強いられている専門医がいなくなるように、将来推計を見直す必要があります。