財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は5月29日、春の建議「歴史的転機における財政」をとりまとめた。このなかで2024年度の診療報酬と介護報酬の同時改定については、仮に1%引き上げた場合には公費負担が2500億円程度、保険料負担は3000億円程度増加することになると試算。その上で、「巨額のコロナ補助金もあり積み上がった資産の状況を含めて、医療機関・介護施設の財政状況を見ながら、引き上げの必要性について慎重に議論を行うべきだ」と主張した。
医療機関の財務状況について建議は、①コロナ関係の補助金交付額は病床確保料、ワクチン接種支援だけでも過去3年間で5兆円に上る、②病院ではこれら補助金により、20〜21年度にかけて純資産が事業費用の5%相当の規模で増加した―と指摘。診療報酬上の措置を含むコロナ特例の早急な解消を要請するとともに、「賃金・物価高への対応においては、こうした資産を活用していくべきだ」との見解を示した。
医療提供体制のあり方では、都市部に集中する診療所の偏在を解消する必要性を強調。外来医師多数区域については現在、新規開業希望者に対して地域に不足する医療機能を担うよう要請できる仕組みがあるが、建議は「もう一歩踏み込んだ規制が必要だ」とし、診療科別、地域別の定員を設けている独・仏も参考に、開業規制の導入についての検討を促した。
入院医療では、地域医療構想の目標年の25年の医療機能別病床数について、病床機能報告に基づく見込数を医療需要から推計した必要量と比べると、急性期は多く、回復期は少ないことを問題視。さらに急性期の見込病床数のほとんどを診療報酬設定が最も高い「急性期一般入院料1」が占める点にも疑義を表明し、地域医療構想の推進や医療費抑制の観点から、「7対1といった看護配置に過度に依存した診療報酬体系から、患者の重症度、救急受入れ、手術といった『実績』をより反映した体系に転換していくべきだ」、「10対1といった看護配置を要件とする急性期入院料は廃止を検討すべきだ」などと提言した。
また、介護保険では利用者負担が2割負担の対象範囲拡大について、「ただちに結論を出す必要がある」と早急な検討を求めた。