カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae:CRE)感染症は,メロペネムなどのカルバペネム系薬剤および広域β-ラクタム系薬剤に対して耐性を示す,腸内細菌科細菌による感染症である。近年の細菌ゲノム解析結果に基づいた再分類により,現在はカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales:CRE)の呼称が一般的となってきている。CREは,カルバペネム分解酵素(カルバペネマーゼ)を産生するタイプ(CPE)と,産生しないタイプ(non-CPE)の2つに大別される。前者はプラスミドを介して菌種を超えてカルバペネマーゼ遺伝子が拡散するため,感染対策上も重要な耐性菌である。
感染症法における定義では,分離・同定による腸内細菌科細菌の検出,かつ次の①あるいは②のいずれかによるカルバペネム系薬剤および広域β-ラクタム系薬剤に対する耐性を確認することとなっている。
①メロペネムの最小発育阻止濃度(MIC)値が2μg/mL以上であること,または感受性ディスク(KB)の阻止円が直径22mm以下であること。
②イミペネムのMIC値が2μg/mL以上であること,またはKBの阻止円が直径22mm以下であること,およびセフメタゾールのMIC値が64μg/mL以上であること,またはKBの阻止円が直径12mm以下であること,のいずれにも該当すること。
これらの定義に該当する菌が,血液,腹水,胸水,髄液,その他の通常無菌的であるべき検体から分離された場合,あるいは喀痰,膿,尿,その他の通常無菌的ではない検体から分離され,かつ分離菌が感染症の起因菌と判定される場合は,5類感染症として7日以内に届け出が必要である。
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