厚生労働省は6月15日、エムポックス(サル痘)予防の適応が追加されている天然痘ワクチンLC16について、HIV感染者や男性間性交渉者(MSM)などハイリスク者に対する発症予防効果を検討する新たな臨床研究を開始すると発表した。
LC16は、国内で製造されているKMバイオロジクス社の乾燥細胞培養痘そうワクチン。国内での感染例発生を受け、昨年8月にエムポックス(サル痘)予防の適応追加が承認されたが、WHOのガイダンスで曝露後4日以内(症状がない場合は14日以内)の接種が推奨されていることから、現在国内では、国立国際医療研究センターでエムポックス患者の接触者に対しLC16を投与する臨床研究体制が構築されている。
しかし、今年に入ってからエムポックス患者は東京都を中心に増え続けていることから、厚労省は、エムポックスの罹患リスクが高い者を対象にLC16の曝露前予防の効果を検討する臨床研究を実施することを決めた。
新たに始める臨床研究の対象となるハイリスク者は、①HIV感染者で、継続的に抗HIV療法を受けており、6カ月以内にCD4陽性細胞数が200/mL以上であることが確認されている者、②男性と性交渉をする男性で、過去1年以内に細菌性性感染症(梅毒、淋菌感染症、性器クラミジア感染症)の罹患歴がある、または過去1年以内にグループセックスへの参加歴がある、または2名以上の性的パートナーがいる者─など。14日以内にエムポックス患者と一定以上の接触をした者などは除外される。
被験者は前期投与群と後期投与群に無作為割付されるが、倫理的配慮により盲検化は行わず、LC16が投与されたことは本人も分かる試験とする。自由診療で行うため、接種を受ける際は3100円の費用負担が発生するという。
研究への組み入れは10月まで、接種は12月までに完了させ、前期群と後期群で投与70日後までのエムポックス発症率を比較し、有効性を確認する。
研究代表者を務める国立国際医療研究センターの氏家無限医師は「6月から国立国際医療研究センターで研究を開始したが、本格稼働するにはまだ1カ月くらいかかる。都内の複数の医療機関の参加を得て多施設共同研究として実施したい」としている。
これまでに国内で確認されているエムポックス患者は6月11日時点で181人。地域別では東京都(136人)が圧倒的に多く、年代別では40代(76人)や30代(60人)が比較的多い状況となっている。