新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言下で,人々は「不要不急」な社会活動を制限されました。そして美容外科は「不急」として,診療の休止を余儀なくされた施設もありました。このような厳しい経験の後に,社会が徐々に正常化に向かう今は,美容外科を見つめ直すよい時期かと考えます。
菊池先生は足病医学がご専門で,「足の美容外来」を開設されています。従来の概念では,歩行という重要な機能を有する足は,美容とは最も遠いところにあるようにも思えます。下北沢病院・菊池 守先生のお考えになる美容についてご教示下さい。
【質問者】原岡剛一 神戸大学医学部附属病院美容外科 特命准教授
【足の美容外科とは健康に歩くだけでなく美しい足,歩き姿,立ち姿を手に入れるための医療である】
美容外科は,人体の機能上の欠損や変形の矯正だけでなく,整容性の改善をめざす臨床医学です。保険診療ではカバーできない患者の整容的な悩みを,様々な手段を用いて解決する医療と言えるかもしれません。
足が担う「歩行」という運動は,人間の社会生活に欠くことのできない重要な機能です。歩行を維持するための治療はもちろん,フットケア・足病医療の範囲と考えられます。また,靴を履くと足が痛い女性に対して,痛い靴の装用を避け正しい靴の選び方を指導することも,足病医療と言えるでしょう。
ただし,歩行機能には問題がなかったとしても,裸足やサンダルで歩く際には,爪の変形や角質の過度な肥厚・乾燥があれば整容的な問題になります。もちろん機能を損なうような治療は行ってはなりませんが,美容という視点で考えるならば,ハイヒールを避けるだけでなく健康な女性が履きたい靴を履くための医療もあってよいと考えます。
私が足の美容の範囲と考えている内容は,以下の通りです。
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