2019年に突如起こった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により,人々の交流様式や生活様式が大きく変貌しました。そのひとつにマスク着用が挙げられます。マスクを着用してcommunicationをとることにより,表情が読み取りにくく,感情が伝わりにくくなったと言われています。一方で,マスク着用が日常化したことで素顔を見せることに抵抗を感じる若者も増えているのも現実です。このようなコロナ禍において美容手術を受ける患者が増えていると聞きます。
コロナ禍における美容医療について,この分野のエキスパートである神戸大学医学部附属病院・原岡剛一先生のご教示をお願いします。
【質問者】元村尚嗣 大阪公立大学大学院医学研究科形成外科学 教授
【生活様式の変化により生み出される新たな身体醜形障害を誘発・悪化させる可能性がある】
COVID-19のパンデミックにより,人々の生活様式は大きく変化しましたが,美容外科も影響を受けました。
まずマスクが生活上のデフォルトとなりました。マスクは顔の大部分を隠すために,顔の美容外科手術後のダウンタイムを乗り越えるのに好都合であり,「マスク生活のうちに美容外科手術を済ませたい」との声は,臨床の場でしばしば耳にします。
一方海外では,リモートワークの励行により,社会の主要なツールとなったビデオ会議(ここでは総称して「Zoom」と称します)に着眼した研究が進められています。
COVID-19パンデミックの前,人々は写真編集アプリを用いて肌をなめらかにし,目を大きくするように,自身にフィルターをかけることが可能となっていました。そして,その理想に自分自身を近づけるために,美容外科に足を運ぶといった事態が生じていました。それはSnapchat dysmorphia(「Snapchat」は米国で人気のある,カメラフィルター機能での加工の容易さを特徴とする,スマートフォン向けの写真共有アプリ)と称され,新たなデジタルツールにより身体醜形障害(body dysmorphic disorder:BDD)を誘発したり,悪化させる可能性が懸念されていました1)。
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