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母指多指症に関する最近の進歩について

No.5197 (2023年12月02日発行) P.50

素輪善弘 (自治医科大学形成外科講座講師)

齊藤 晋 (京都大学大学院医学研究科形成外科学准教授)

登録日: 2023-12-04

最終更新日: 2023-11-28

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  • 母指多指症に関する最近の進歩について,京都大学・齊藤 晋先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    素輪善弘 自治医科大学形成外科講座講師


    【回答】

    【母指多指症に合併する母指球筋や腱鞘の異常へのアプローチが必要】

    医学雑誌に母指多指症に関する報告をみるようになったのは1950年代からです。当時,母指多指症は機能的意義のない過剰な指であり,それの除去のみで十分であると考えられていましたので,出生の段階で単純切除されることもめずらしくありませんでした。このような治療が変形を生んだことはご存じの通りです。

    1970年代には母指多指症の解剖学的異常が発見され,それらを修正し,生理的な機能を獲得する再建手技が提案されました。短母指外転筋の停止異常や屈筋腱および伸筋腱の走行異常,腱鞘の異常,関節形態の異常などです。特に,以前「カニ爪様」と呼ばれた(現在,日本手外科学会では「末節収束型」と名称を変更しています)ワッセルⅣ型母指多指症では,屈筋腱の停止部が内側へずれていますので,それを末節骨の中央に移動し固定する手法が考案されました。

    また,橈側・尺側母指が同じ大きさのワッセルⅢ型では,片方を切除し片側を残す手術をすると末節骨が傾く変形を生じることがあります。そのため,基節骨の土台を残して関節を安定化する手法が報告されています。橈側・尺側母指が同じ大きさのワッセルⅡ型やⅢ型に対する二分併合法については,以前よりも整容的に良好な成績が報告されています。

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