【質問者】田中里佳 順天堂大学大学院医学研究科再生医学 主任教授/医学部形成外科学教授
【顔面においては面,色調,質感を意識し,縫合線を皺線に極力沿わせ,真皮縫合・表皮縫合を確実に綺麗に行うことが重要】
顔面の再建手術が必要となる代表的なものが悪性腫瘍切除後の欠損である。悪性腫瘍でも,皮膚に限局する皮膚悪性腫瘍から骨を含む深部組織まで達する軟部肉腫など様々なvariationが存在する。悪性腫瘍である以上,根治切除されていることが原則であるが,顔面であるがゆえに根治性が得難い悪性腫瘍の局所制御目的の切除後に綺麗な再建が必要となることもある。
顔面の傷を目立たなくするためには,他部位と同様に縫合線を皺線であるrelaxed skin tension line(RSTL)を横切らずに極力沿わせること,真皮縫合・表皮縫合を確実に綺麗に行い,瘢痕形成を最低限にすることなどは必須事項である。
基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)は鼻部に好発する皮膚悪性腫瘍であるが,ほとんど転移はせず局所の制御が可能である。鼻部再建の3原則は,①支持組織(support),②裏打ち(lining),③外鼻皮膚(cover)であるが,鼻部BCCはタイプにより水平方向で3〜10mm,垂直方向は軟骨膜上あるいは下で切除が行われるため,多くが外鼻(皮膚)再建となる。外鼻再建においては,鼻部subunitの利用や外鼻zone分類が提唱されているが,個々の症例で優先順位を考える。筆者らは,鼻尖部はaxial front nasal flap,鼻翼部は鼻唇溝皮弁とcomposite graft,側壁三角で鼻翼に接する部分はrhomboid flap,鼻部中央部はoblique sigmoid subcutaneous island(OSS) flap,鼻部上部ではmedian forehead flap,それらをまたぐような大きな欠損では複合皮弁を使用することが多い1)。
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