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筋性斜頸[私の治療]

No.5178 (2023年07月22日発行) P.50

川端秀彦 (南大阪小児リハビリテーション病院整形外科・病院長)

登録日: 2023-07-20

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  • 斜頸は頭頸部の位置異常を呈する疾患群で,その中で最も頻度が高いものが筋性斜頸である。筋性斜頸は,耳介後方の乳様突起と胸骨・鎖骨との間を結ぶ胸鎖乳突筋の筋腹内に発生した腫瘤や,それに続発する筋の線維化によって筋が短縮した結果として生じる。筋性斜頸の鑑別診断には骨性斜頸,炎症性斜頸,眼性斜頸等がある。

    ▶診断のポイント

    【疫学・病因】

    発生頻度は0.3~2.0%である。女児にやや多く,右側例が左側例の2~3倍の発生率で,両側例はきわめて稀である。巨大児や骨盤位分娩児に多く発生する。

    発生原因は特定されていないが,組織学的に出血の所見がまったくみられないことなどから外傷説は否定的で,現在は胸鎖乳突筋のコンパートメント症候群によって発症するという説が有力である。

    組織学的には,本疾患の胸鎖乳突筋に線維性瘢痕組織と混在する大小不同の筋線維や間質の増大などの所見を認める。

    【視診】

    頭部を患側に傾け,顔面を健側へ回旋した特徴的な姿勢をとる。治癒が遷延する例では,頭部の変形・顔面の非対称性が目立ってくる。

    【触診】

    典型的な筋性斜頸では患側の胸鎖乳突筋に弾性硬の腫瘤を触れるが,腫瘤が出生直後からはっきりしていることは少なく,出生後2~3週間で気づかれることが多い。この頃から典型的な位置をとる。腫瘤は無痛性・紡錘状で,最大で母指頭大ほどにもなるが,3~6カ月以降は自然に消失し,筋の短縮と緊張だけが残る。

    【理学所見】

    頸の健側への側屈と患側への回旋が制限される。神経学的異常を認めず,疼痛の訴えがない。斜頸児には先天性股関節脱臼など他の四肢・体幹の異常の合併頻度が高いという報告もあり,全身の注意深い診察が必須である。

    【画像所見】

    超音波断層検査は,非侵襲性で腫瘤の位置・大きさ・大まかな性状を把握することができる。超音波画像で筋内に線維性の索状構造が認められるものは予後不良である。

    単純X線写真・3D-CTは骨性斜頸との鑑別に用いられる。MRIは胸鎖乳突筋の左右差や線維化の評価だけではなく,炎症性斜頸などとの鑑別にも有用である。

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