腰椎分離症は発育期に疲労骨折として生じる。早期に発見されれば骨癒合が得られるが,癒合が得られなければ偽関節となり,生涯にわたり腰椎分離症が完成する。腰椎分離症は,時に分離すべり症へ移行する。腰椎分離症が分離すべり症へ進展する病態は2つある。1つは発育期のすべり症であり,椎体成長軟骨板の剝離により生じる。この病態は椎体の成長障害も合併するので,診断は容易である。すべり椎体は楔状変形となり,尾側椎の腹側は円形化する。もう1つはいわゆる変性すべり症であり,椎間板変性などにより中高齢者に生じる。
ほとんどの症例は保存療法・運動療法が奏効する。特に,進化した運動療法の効果は格別のものがある。Exercise is Medicineであり,整形外科医は運動療法のプロフェッショナルであるべきである。本稿では,成人での腰椎分離症,分離すべり症の臨床およびpain generatorについて解説する。
腰椎分離症のほとんどが発育期に疲労骨折として生じるが,稀に成人にも生じる1)。Tezukaら1)は11例の成人発症疲労骨折を報告している(いずれもハイクラスのアスリート)。
成人となると,偽関節での腰痛はほとんど生じない。稀に,腰椎伸展での腰痛が誘導され,STIR-MRIにて偽関節内に水腫がみられれば,腰椎分離症の腰痛と診断される。
発育期のすべり症は周囲の椎体変形を生じているため,成人分離すべり症との鑑別は容易である。分離すべり症と無分離すべり症の根本的な違いは,椎弓による後方圧迫の有無である。分離すべり症では,後方椎弓はすべってこないため,椎弓による圧迫はない。病態は,①foraminal stenosisやragged edgeでの神経根症状,②椎間板周囲の変性(椎間板性腰痛,Modic変化)での腰痛,③分離部や椎間関節の炎症・水腫での腰痛,の3点に集約される。
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