はじめに
(1)POCUSは診療所の差別化に役立つ。
(2)「口コミ」がすべて:命に関わる便秘を見逃すな!
(3)きちんとお腹の中を診察してもらったとの安心感が重要。
(4)便秘の原因診断が適切な治療薬選択に役立つ。
1 既存の便秘解説書の問題点は何か?
(1)命に関わる便秘を速やかに鑑別する具体的な方法が記載されていない。
(2)便秘の状態を短時間に的確に把握する方法が記載されていない。
(3)便秘との認識のない便秘状態が引き起こす腹痛の記載がない。
2 急がば回れ! 便秘POCUSの習得は消化管エコーを学ぶこと!
便秘だけに特化したPOCUSの方法は存在しない。消化管に対するPOCUSの中に,便秘に対するPOCUSは含まれる。本特集では,便秘に関連する大腸の観察方法について解説する。
3 便貯留の有無の診断
大腸のどの部位にどの程度の便が貯留しているかが把握できると,便秘の病態の推測に役立つ。さらに,便秘の自覚がない潜在的な便秘による腹痛などを診断することが可能となる。
4 直腸を診る
直腸知覚低下(便意がないのに直腸に便が貯留している状態),浣腸や摘便が必要な硬便貯留などの評価,便秘・下痢・残便感などを呈する直腸癌の発見に不可欠である。
5 命に関わる便秘症例を見つけ出す
患者のため,自分のために,医療訴訟のリスクを避ける。進行大腸癌による腹部症状や便通異常,穿孔の危険がある大腸閉塞はPOCUSにて速やかに診断し適切な対処を行う。
6 スパスムによる便秘を忘れてはいけない
忘れられた「痙攣性便秘」は今も存在する。大腸スパスムはエコーで見える。大腸スパスムによる痙攣性便秘には,桂枝加芍薬湯と浸透圧性下剤やリナクロチドの併用が有効。
7 筆者が考える薬の選択
初めは多剤併用と生活習慣の改善でコントロールを行う。排便コントロールが安定してきたら徐々に減薬し,最終的には生活習慣改善と浸透圧性下剤でのコントロールをめざす。
8 クリニックでの腹部POCUS上達の極意
お腹の中はブラックボックス。すぐにエコーを行う。解剖と各臓器の見え方の理解,見える部位はすべて観察する習慣が重要。