社会保障審議会介護給付費分科会は8月7日、高齢者施設等と医療機関の連携強化や、介護保険施設における医療の提供などについて議論した。この中で介護老人福祉施設(特養)では配置医師不在時の緊急対応が課題であることや、介護医療院では看取りへの対応が必要になっていることが明らかになった。
2024年度介護報酬改定では、今後も増加が続く医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を、限られた医療・介護資源でどのように支えていくかが課題。対応策として、(1)介護保険施設等の医療対応力の向上、(2)施設内で対応できない場合の受入先となる医療機関との連携強化―が主な論点となっている。
医療機関との連携に関連して厚生労働省は、①介護保険施設等からの入院患者の7割以上は「急性期一般入院基本料」の算定病床に入院している、②入院による安静臥床がADLや認知機能低下の要因になることや、一般病院への入院で要介護度が悪化したことが既存研究で明らかになっている―ことを報告。受入先医療機関が提供できる医療の内容と、要介護高齢者に必要な医療の内容に齟齬が生じている可能性を示した。
意見交換では、複数の委員から、高齢者にとって日常的な疾患は、地域包括ケア病棟のある病院や在宅療養支援病院での受入を原則とすることが提案された。
一方、施設の医療対応力の現状で、特養は配置医師不在時の急変対応を「原則、救急搬送」としている施設が3割程度あることがわかり、問題視された。配置医師の雇用形態が嘱託であることが多いためだが、「配置医師緊急時対応加算」の算定率も低く、算定していない理由は、「配置医師が必ずしも駆けつけ対応ができない」、「緊急の場合はすべて救急搬送で対応している」などが多い。
介護老人保健施設(老健)では、ポリファーマシー(多剤投与に起因する有害事象)への対応が論点となった。入所前の主治医との連携による薬剤調整の取組に対しては「かかりつけ医連携薬剤調整加算」が設けられているが、算定率は極めて低く、主治医との情報連携の難しさを算定しない理由に挙げる施設もあった。介護医療院では、退所者の過半数が死亡退所であり、医療が必要な要介護高齢者の長期療養・生活施設としてだけでなく、看取りの場としての機能も担っている実態が明らかになった。