肩関節は肩甲骨と上腕骨頭より構成されている。この肩甲上腕関節の軟骨が変性し破壊が生じている状態が,変形性肩関節症(OA)である。先行する疾患がなく加齢などに伴う一次性OAと,上腕骨近位部骨折や肩甲骨関節窩骨折,腱板広範囲断裂,肩関節脱臼,感染,不安定肩,関節リウマチなどに伴う二次性OAがある。若い年齢層では関節リウマチや脱臼・骨折などの外傷後にみられ,高齢者では後述する腱板断裂後関節症(cuff tear arthropathy:CTA)1)としてみられることが多い。
単純X線写真では,関節裂隙の狭小化がほとんどの症例で認められる。その他,骨硬化像や上腕骨頭の骨棘形成,肩峰の侵食像や骨折,肩甲骨関節窩の侵食および骨欠損像などもみられる場合がある。
CTAは,広範囲腱板断裂が生じ時間が経過すると,肩甲上腕関節の不安定性が起こり,上腕骨頭が上方化する。また,スペーサーとしての腱板もないために,肩峰の下面と大結節が直接衝突することにより,大結節が丸く変形し大腿骨頭化(femoralization)や,肩峰下面が骨頭の形状に合わせるように摩耗や骨棘の形成が生じ,肩峰下面の臼蓋化(acetabularization)がみられるようになる。上腕骨頭が上方化することにより,上腕骨頭上方の軟骨は比較的早期から摩耗が生じ,さらに進行していくと肩甲上腕関節の関節裂隙の狭小化が起こり,上腕骨頭の圧潰を生じる。CTAはいわゆる腱板断裂の終末像と言え,Hamada分類2)がよく用いられる。
治療としては,消炎鎮痛薬の内服,関節内注射,腱板機能訓練,可動域獲得訓練,物理療法などがまず行われる。これらの一般的な保存治療を施行しても,夜間痛などの強い痙痛がある症例や,可動域の改善を強く望む症例が手術の適応となる。
手術には,関節鏡視下でデブリードマンや上腕二頭筋長頭腱を腱切離・固定する方法と,人工骨頭や人工関節を用いる方法がある。ただ,腱板断裂を修復できない場合には,解剖学的な人工肩関節全置換術では肩甲骨側のインプラントが早期に緩むことや,可動域の改善が不十分なため,2014年にわが国でも使用可能となったリバース型人工肩関節(RSA)を用いる。RSAは,解剖学的にはボール様の上腕骨頭を受け皿に,受け皿である肩甲骨関節窩をボール様に置換することで,人工関節の拘束性を高めて三角筋筋力によって手の挙上位を可能にするという人工関節である3)。RSAはその良好な成績から,近年症例が飛躍的に増加している。
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