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硬膜下蓄膿(硬膜下膿瘍)[私の治療]

No.5184 (2023年09月02日発行) P.39

花谷亮典 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科脳神経外科学教授)

登録日: 2023-09-02

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  • 頭蓋内硬膜下膿瘍は,硬膜とくも膜の間に膿がたまる脳感染症で,頭蓋内局所性感染症の15~20%を占める。炎症やこれに伴う血流障害,脳の圧迫等により,脳の局所症状や重篤な症状を引き起こし,死亡率は4~9%に及ぶ。頭蓋内への感染経路として,頭蓋内血管を介した塞栓による血行性感染と,副鼻腔や耳内の炎症の進展,そして外傷や神経外科的処置に伴う直接感染が挙げられる。
    小児および20歳未満では,副鼻腔炎および耳原性感染症が原因となることが多い。前頭洞粘膜は板間静脈ときわめて薄い骨壁で隔てられているだけで,洞粘膜の静脈は板間静脈や硬膜の静脈と交通しているため,頭蓋内への感染経路となりやすい。成人では頭部の外科手術に関連することが多い。さらに,頭蓋内血管を介した塞栓による血行性感染も生じうる。
    一般的な原因菌は,好気性連鎖球菌,ブドウ球菌,好気性グラム陰性桿菌,嫌気性菌,インフルエンザ菌,肺炎球菌などである。副鼻腔炎に続発する硬膜下膿瘍では,嫌気性菌および好気性連鎖球菌が多い。頭蓋外傷や外科手術に続発する例では,黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌が一般的である。また,原因菌が複数の場合もある。

    ▶診断のポイント

    炎症,頭蓋内圧亢進,そして局所巣症状による症状がみられる。ほとんどの患者で発熱と頭痛を伴い,感覚異常,嘔吐,てんかん・痙攣発作も半数近くでみられる。また,乳頭浮腫,脳神経麻痺,片麻痺などの症状も現れる。膿瘍は硬膜下を広範に広がるため,広範な静脈うっ滞,静脈血栓症,脳炎,脳卒中を伴うことがある。障害が数日で急速に進行し,一側の脳半球に広く波及した病変が示唆される場合は,硬膜下膿瘍を疑う必要がある。

    血液検査は非特異的で,白血球数,CRP,赤血球沈降速度が上昇することがある。血液培養は推奨されるが,菌の同定率は高くない。腰椎穿刺による髄液検査は,脳ヘルニアを助長する可能性があり,神経画像検査によって腫瘤病変が除外されない限り禁忌である。

    CTでは,三日月形の等吸収〜軽度高吸収を呈し,辺縁に強い環状の造影効果がみられる。MRIはより感度が高く,T1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈する脳実質外の腫瘤(液体貯留)として観察される。拡散強調画像で著明な高信号,ADC(apparent diffusion coefficient)低値を示す。辺縁の被膜や髄膜,くも膜下腔の滲出物には造影効果がみられる。

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