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先天性胆道拡張症[私の治療]

No.5185 (2023年09月09日発行) P.51

菱木知郎 (千葉大学大学院医学研究院小児外科学教授)

登録日: 2023-09-06

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  • 先天性胆道拡張症の定義は,「胆道の様々な部位に拡張を呈する先天性の形成異常」である。Todani分類により5型に分類されるが,このうち総胆管を含む肝外胆管が限局に拡張する症例(Todani分類のⅠa型,Ⅰc型,Ⅳ-A型)の頻度が非常に高い。これらは狭義の先天性胆道拡張症と定義され,全例に膵・胆管合流異常を合併する。女性に発症する頻度が男性よりも高く,約3倍とされている。また,欧米に比べアジア人種に高頻度に発症すると考えられている。
    先天性胆道拡張症の三主徴は右上腹部腫瘤,黄疸,腹痛であるが,これらがすべてそろうことは20~30%程度であるとされる。新生児期の閉塞性黄疸や小児期からの繰り返す腹痛とこれに伴う高アミラーゼ血症がみられる場合には,本症を疑う必要がある。乳児や幼小児では,稀に胆道穿孔による胆汁性腹膜炎をきたすこともある。一方で,近年は胎児期に腹腔内囊胞を指摘されて診断に至る症例も多く報告されている。
    膵・胆管合流異常では,膵管と胆管が十二指腸外で合流して乳頭まで長い共通管を形成する。2つの管が十二指腸乳頭部括約筋の機能が及ばない近位で合流するため,膵液と胆汁が相互に逆流しうる。膵液が胆管内に逆流することによりしばしば蛋白栓が形成され,これが共通管や胆管狭小部に陥入することにより膵・胆道系内の内圧が上昇する。これにより腹痛,嘔吐,黄疸,高アミラーゼ血症などが惹起される。さらに,胆道内への膵液逆流は胆道癌発生にも密接に関与すると考えられている。

    ▶診断のポイント

    先天性胆道拡張症では,多くの場合,腹痛などの症状は一時的であり,有症状時に血清アミラーゼ値,直接型ビリルビン値,胆道系酵素等が一過性に上昇するが,これらのデータは症状の改善とともに正常化する。

    先天性胆道拡張症の診断において,腹部超音波検査は非侵襲的かつ簡便な診断ツールであり,肝外および肝内胆管の拡張を確認することにより診断できる。総胆管結石や悪性腫瘍による下部胆管閉塞と比較し,胆管の拡張は限局しており,肝内で急激に正常径に移行する点が特徴的であるとされる。

    診断例では,MRIによる胆管膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography: MRCP)や内視鏡的逆行性膵管胆道造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)により,膵・胆管合流異常を同定することが推奨されるが,後者は小児においては全身麻酔が必要かつ侵襲性の高い検査であり,近年は行われない傾向にある。胆管径計測は小児胆管正常径の正常上限を参考にし,胆道内圧を上昇させない検査手法(腹部超音波検査等)を用いて行う。

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