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【文献 pick up】CKD例のアルブミン尿悪化で骨折リスク高―超大規模観察研究/KI Rep誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-09-08

最終更新日: 2023-09-11

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透析患者における骨折リスク上昇は以前から知られているが、近年、慢性腎臓病(CKD)の時点ですでに骨折リスク上昇が始まっているとする報告が増えている[de Bruin IJA, et al. 2020]。

これまでCKDと骨折リスクの関係は推算糸球体濾過率(eGFR)を指標に検討されるケースが多かったが、アルブミン尿を指標にすると非常にクリアな相関が認められるようである。Kidney International Reports誌で8月28日、カナダのSandra M. Cooke-Hubley氏らが報告した

【対象】

解析対象となったのは、カナダ・アルバータ州悉皆的住民レジストリに登録されていた、クレアチニンと尿中アルブミンデータが揃っていた18歳以上の住民2725026名である。

eGFR<15mL/分/1.73m2」例は除外されている。

【方法】

これら272万名強を7.6年間(中央値)観察し、アルブミン尿、腎機能と脆弱性骨折リスクの関連をそれぞれ調べた。

アルブミン尿は以下の3群、腎機能は5群に分けた。

・アルブミン尿:「無・軽度」(ACR<30mg/g、またはPCR<150mg/g、定性検査陰性)、「中等度」(ACR 30-300mggPCR 150-500mgg、定性検査1+)、「重度」(ACR>300mggPCR>500mgg 、定性検査2+以上)

・腎機能:eGFR「≧90」「60-<90」「45-<60」「30-<45」「15-<30mL/分/1.73m2

【結果】

その結果、観察期間中に2.9%で脆弱性骨折を認めた。発生率に直すと4.91000人年である。

まずアルブミン尿と脆弱性骨折の関連を調べると、「無・軽度」に比べ「中等度」ですでに諸因子補正後のオッズ比は1.1895%信頼区間[CI]1.15-1.21)の有意高値となっていた。「重度」群では1.22(同:1.17-1.28)まで上がる。

この傾向は大腿骨骨折、椎体骨折のみで検討しても認められた。

一方、eGFRと脆弱性骨折リスクの関係はUカーブを描き、eGFR45-<60mL/分/1.73m2で最小となっていた。

【考察】

アルブミン尿が重度になるほど骨折リスクが上昇する理由としてCooke-Hubley氏らは、内皮機能低下(アルブミン尿はマーカー)に伴う骨灌流低下がもたらす骨ターンオーバー悪化[Barzilay JI, et al. 2013]、アルブミン尿増加に伴う副甲状腺ホルモン上昇による骨吸収亢進の可能性[Kim HW, et al. 2014]などを挙げている。

本試験への資金提供については開示がなかった。

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