一手目 :テグレトールⓇ100mg錠(カルバマゼピン)1回1錠1日2回(朝・夕食後)
発作が抑制されない場合には,血中濃度8~10μg/mLを目安に,14日ごとに1日量を100mg増量する(最大1000mg/日)。半減期からは,1日2~3回にわけての投与が望まれる。
一手目 :イーケプラⓇ250mg錠(レベチラセタム)1回1錠1日2回(朝・夕食後)
14日ごとに1日量を250~500mg増量し,1回3錠1日2回(朝・夕食後)を目安に漸増する。
二手目 :〈処方変更〉ビムパットⓇ50mg錠(ラコサミド)1回1錠1日2回(朝・夕食後)
上記量で開始し,14日ごとに1日量を50~100mg増量して,100mg錠1回1錠1日2回(朝・夕食後)へ増量する。
三手目 :〈処方変更〉フィコンパⓇ2mg錠(ペランパネル水和物)1回1錠1日1回(就寝前)
上記量で開始し,14日ごとに1日量を1~2mg増量して,1回2錠(4mg)まで漸増する。発作が抑制されない場合は,眠気,ふらつきの副作用に留意しながら,14日ごとに1日量を1~2mg増量して,1回4錠(8mg)まで漸増する。
①治療の最終目標は,「副作用のない(最も少ない)発作消失」である。患者のQOLの改善には,発作のみならず発作間欠期の副作用への留意が大切である。
②高齢発症てんかんに対しては,薬物吸収・代謝・排泄の変化を考慮して,上記の処方例の半減,すなわち開始量,増量の用量,維持量,すべての半減が望まれる。
③イーケプラⓇ,フィコンパⓇは,増量で易刺激性(いらいら)・易怒性の精神症状が副作用として出現しうるので,精神症状がある患者ではさらに半分量から開始し,緩徐な増量,維持量の半減が望まれる。
④上述した単剤で効果不十分であれば,合理的併用療法として2剤併用を検討する。単剤投与が可能な薬剤を例に挙げると,NaチャネルブロッカーであるテグレトールⓇとビムパットⓇ,シナプス前膜のシナプス小胞に作用するイーケプラⓇ,シナプス後膜のAMPA受容体を選択的に阻害するフィコンパⓇ,GABA作動薬であるマイスタンⓇの中から作用機序の異なる2剤を選択することとなる。フィコンパⓇやラミクタールⓇは,肝酵素誘導作用のあるテグレトールⓇと併用すると濃度が低下するため,留意する。
一手目 :デパケンⓇ200mg錠(バルプロ酸ナトリウム)1回1錠1日2回(朝・夕食後),またはセレニカⓇR 200mg錠(バルプロ酸ナトリウム)1回2錠1日1回(夕食後)
発作が抑制されない場合には,いずれも血中濃度50~100μg/mL(治療参考域)を目安に,14日ごとに1日量を200mg増量する。通常400~2000mg/日で,この治療参考濃度に達する。セレニカⓇRのほうが半減期が長く,分1投与が可能である。バルプロ酸ナトリウムで発作が抑制されない場合には,焦点発作と同様に,イーケプラⓇに変更する。それでも効果が不十分な場合,バルプロ酸ナトリウムにイーケプラⓇ,ビムパットⓇ,フィコンパⓇのいずれかを併用する。
【参考資料】
▶ 「てんかん診療ガイドライン」作成委員会, 編:てんかん診療ガイドライン2018. 医学書院, 2018.
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html
松本理器(神戸大学大学院医学研究科脳神経内科学分野教授)