社会保障審議会介護給付費分科会は9月15日、介護報酬体系の簡素化や、介護老人保健施設と介護医療院の多床室への室料負担導入などについて議論した。報酬体系の簡素化では各種加算のうち、算定率が8割を超える加算はすでに一定の役割を終えたと考えられることから、基本報酬への包含を提案する意見もあった。
介護報酬体系は累次の改定を経て複雑化しており、例えば加算の種類数は制度当初と比べると、通所介護は5から31に、老健は8から71へと大きく増加。事務負担の軽減や利用者にとってよりわかりやすい制度に改める観点から、簡素化が急務となっている。
厚生労働省はこの日の分科会に、各種加算の算定状況に関するデータを提示。それによると、2021年度から22年度の平均算定率は12種類の加算(訪問看護の「緊急訪問看護加算1」、老健の「夜勤職員配置加算」など)で80%を超えた。その一方で22年度に算定がない加算は20種類、22年度の平均算定率が1%未満の加算も41種類に及ぶ。
議論で算定率が8割を超える加算に関しては、評価対象の取組が広く浸透したと考えられることから複数の委員が基本報酬に組込むことを提案。算定実績がほとんどない加算については、廃止を検討すべきとの意見や、要件設定の妥当性を含め、算定が進まない原因を丁寧に検証する必要があるとの意見があった。
介護保険施設の多床室の居住費負担は、介護老人福祉施設は光熱水費と室料、老健と介護医療院は光熱水費のみが利用者負担(保険給付外)となっている。制度の持続可能性の確保や在宅でサービスを受ける利用者との公平性を図る狙いから、老健と介護医療院にも室料負担を導入することが、社会保障審議会介護保険部会で議論されたものの、昨年末の意見とりまとめでは結論が先送りされた経緯がある。このため政府の「骨太の方針2023」では、24年度から始まる次期介護保険事業計画に向けて結論を得るとされた。
特養のみ室料負担が導入されたのは、死亡退所が多いなど事実上の生活の場として利用者に選択されている点を考慮した結果。厚労省は各施設の機能や利用実態を踏まえ、再度の検討を促したが、委員からは賛否両論が示され、一定の方向性を見出すには至らなかった。