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パーキンソン病[私の治療]

No.5191 (2023年10月21日発行) P.53

服部信孝 (順天堂大学医学部脳神経内科教授)

登録日: 2023-10-20

最終更新日: 2023-10-17

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  • 臨床症状は,動作緩慢,固縮,姿勢反射障害,静止時振戦などの運動症状や,便秘,排尿障害,起立性低血圧症,うつ病,幻覚などの非運動症状が挙げられる。
    病理学的には中脳黒質のドパミン作動性ニューロンの変性・脱落と,α-シヌクレインの凝集体であるレビー小体の蓄積が特徴的である。

    ▶診断のポイント

    診断基準(MDS task force)では,無動がコアで,静止時振戦か筋固縮のどちらか一方,あるいは両方を伴う場合に診断を考える。上記症状の確認と抗パーキンソン病薬での症状の改善,脳MRI,123I-metaiodobenzylguanidine(MIBG)シンチグラフィ,ダットスキャン(イオフルパン)などを用いた画像検査により総合的に検討・診断する。

    脳MRI画像は正常で,MIBGシンチグラフィは心臓における交感神経系の脱神経を反映し,取り込みの低下を認める。ダットスキャンでは,黒質線条体のドパミン神経の変性・脱落とドパミントランスポーター(DAT)の減少を反映し,集積の低下を認める。

    他のパーキンソン症状を呈する疾患(進行性核上性麻痺,多系統萎縮症,大脳皮質基底核変性症,薬剤性パーキンソニズムなど)を鑑別することが重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    対症療法のみ可能で,早期と進行期で治療選択をすべきである。症状の程度,日常生活への支障度を勘案し,治療の開始を検討する。また,運動症状のみならず,便秘,睡眠障害,排尿障害,高次脳機能障害などの非運動症状の治療も重要である。

    薬剤の選択に関しては,年齢や認知機能障害,精神症状の有無を考慮し,決定する。

    早期治療に関しては,高齢(通常65歳以上),認知機能障害,精神症状の合併例ではレボドパ含有製剤で治療を開始し,それ以外(65歳未満)では,ドパミンアゴニストやMAO-B阻害薬で治療を開始する。ただし,65歳未満であっても,症状改善を優先する必要性がある場合には,レボドパ含有製剤で開始するなど,患者それぞれの状況に応じて薬剤を選択する。

    病状の進行とともに,wearing off(抗パーキンソン病薬の効果持続時間が短縮し,それに伴い症状の変動を認める現象),on-off(内服と関係なく,症状の変動を認める現象),delayed on(効果発現まで時間がかかる現象)などの運動症状の日内変動(motor fluctuation)が生じてくるため,それぞれに対応して薬剤の調節 (用法・用量の変更,他剤の追加など)を行う必要がある。日中過眠,消化器症状,幻覚,突発睡眠などの副作用に注意を払う。

    進行期でレボドパの服用回数5回以上,off時間が2時間以上,トラブルサムジスキネジアが1時間以上を満たす場合は,脳深部刺激療法かレボドパ・カルビドパ配合経腸用液を検討する。一般に,70歳未満でかつ高次脳機能障害がなければ脳深部刺激療法,70歳以上で軽度高次脳機能障害があればレボドパ・カルビドパ配合経腸用液を検討する。

    遺伝性パーキンソン病でparkin遺伝子陽性例は,脳深部刺激療法が有効であるので,若年発症のパーキンソン病では積極的に遺伝子診断を実施する。

    早期からリハビリテーションなどを積極的に取り入れることが大事である。また,日本神経学会監修の「パーキンソン病診療ガイドライン2018」1)も参照されたい。

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