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ウエストナイル熱[私の治療]

No.5191 (2023年10月21日発行) P.56

加藤康幸 (国際医療福祉大学医学部感染症学教授)

登録日: 2023-10-21

最終更新日: 2023-10-17

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  • ウエストナイル熱はアフリカ,中東,欧州に分布するウイルス性疾患と認識されてきたが,1990年代末から北米に流行地が拡大した。現在,米国では年間2000人程度の患者発生報告がある。病原体のウエストナイルウイルス(フラビウイルス科)は野鳥が自然宿主と考えられ,イエカなどヒトとトリを吸血する蚊によって媒介される。ウイルス学的には日本脳炎ウイルスと近縁であり,臨床像も類似していると考えられる。無症候性感染がほとんどと考えられ,脳炎を発症するのは高齢者や免疫不全者に限られ,ウエストナイル熱を発症した患者の1%以下と考えられる。感染症法の4類感染症(全数報告)に指定されているが,確定例は2005年に米国からの帰国者で報告された1例のみである。

    ▶診断のポイント

    流行地(図)1)に居住・滞在歴のある発熱患者には,ウエストナイル熱も疑う。なお,北米では毎年夏季に流行がみられる。潜伏期は2週間以内で,デング熱のように回復期に体幹や四肢に紅斑が出現することがあり,このような症状を認める場合には蓋然性が高い。急性脳炎,髄膜炎,急性弛緩性麻痺を呈する患者では,海外渡航歴がないか確認する。MRI検査上,視床,中脳,大脳基底核に異常所見を認めるのが典型例とされるが,これに該当しない症例の報告も多い。

    確定診断は,血液や髄液から病原体遺伝子を検出することにより行う。血清診断の場合,産生される抗体は日本脳炎ウイルスと交差反応を示すため,解釈には注意を要する。これらの検査は国立感染症研究所に依頼することができる。

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