肺炎球菌は髄膜炎,敗血症・菌血症などの侵襲性感染症および,副鼻腔炎,中耳炎,肺炎などの気道感染症の原因となる細菌である。小児に対する結合型肺炎球菌ワクチン(13価)によって侵襲性感染者は大幅に減少したが,血清型の置換現象で今後も患者発生が想定される。また,ハイリスク者に対する追加の結合型肺炎球菌ワクチン(13価)(15価は成人に使用可能),65歳以上を対象とした莢膜多糖体肺炎球菌ワクチン(23価)の接種でリスクを軽減することが可能である。
臨床診断に基づき細菌感染症を疑った場合に,感染部位を反映する検体(肺炎:喀痰,髄膜炎:髄液,菌血症:血液)のグラム染色および培養検査を行い,結果に基づいて診断する。検体採取が困難な小児の肺炎,副鼻腔炎,中耳炎では原因菌として肺炎球菌を常に想定する。鼻腔咽頭細菌培養の結果は原因を必ずしも反映しない。血液培養の陽性率は感染部位によって異なるが,入院治療を想定した場合は2セット以上の採取が原則である。尿中抗原検査については保菌の場合でも陽性となることがあるため注意が必要で,特に小児では推奨されない。
肺炎球菌による非侵襲性感染症の治療は,ペニシリン系抗菌薬による治療が基本であり,ペニシリン低感受性菌でも高用量治療に反応する。小児ではオゼックスⓇ(トスフロキサシントシル酸塩水和物)以外の内服キノロン系抗菌薬は禁忌となっている。
侵襲性感染症を疑った場合は,ペニシリン耐性肺炎球菌や他の原因菌を想定した抗菌薬選択が必要である。最終的な治療薬選択は,感受性結果に応じて検討する。ペニシリン感受性株はアンピシリン,ペニシリン耐性株は第3世代セファロスポリンで加療する。第3世代セファロスポリン耐性の場合は,レボフロキサシンやバンコマイシンを併用する。薬剤感受性のカットオフ値は,髄膜炎の場合は異なることに注意が必要である。また,感受性がある場合でも,中枢神経系への移行性の悪い第1・2世代セファロスポリンは使用しない。菌の陰性化は比較的速やかであるが,全身状態の改善には時間がかかることがある。小児の潜在性菌血症の場合は解熱,培養陰性化が得られたら内服治療が可能である。
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