・抗不安薬にはベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZs)とセロトニン1A受容体部分作動薬がある。また,分類として抗うつ薬ではあるが,臨床においては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を用いる。
・BZsはGABA受容体に作用し抗不安作用をもたらす。
・セロトニン1A受容体部分作動薬およびSSRIはセロトニン(5-HT)受容体に作用し抗不安作用をもたらす。
・利点としては,効果発現が早く,有効性を実感しやすいことなどがある。
・問題点は,副作用として過鎮静,ふらつき,記憶障害,奇異反応,脱抑制,依存性,耐性があることである。また高齢者には副作用が生じやすい。
・従来の三環系抗うつ薬やBZsと比較し副作用が少ない。
・副作用としては消化器症状,セロトニン症候群,性機能障害,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などがある。
・効果発現に2~4週間以上かかる。
・若年者(24歳以下)では自傷や自殺の危険性が高まる可能性がある。
・急な投与中止は嘔吐,焦燥感といった離脱症状を引き起こすことがあるので,注意が必要である。
・不安症の患者に対してBZsは単剤で投与されていることが多い。
・わが国においてSSRIが適応となっている不安症としてはパニック症,社交不安症,強迫症などがあり,薬物療法の第一選択薬はSSRIが推奨されている。
・治療効果が乏しければ,専門医に紹介する。
不安という感情はそもそも危険を警告するという原始的なメカニズムであり,不安自体は決して病的なものではない。動物の生存にとって必要な機構ではあるが,現代生活においては過剰な不安により,日常の社会生活を送る上で足かせとなることがあり,その苦しみを和らげるために抗不安薬が使われるようになった歴史がある。
不安を発生させる脳の部位は,海馬,扁桃体,視床下部といった大脳辺縁系と考えられている。これらの部位からノルアドレナリン,セロトニン(5-HT),ドパミンなどの神経伝達物質を介して青斑核,縫線核など脳幹に投射され,様々な自律神経系に作用し不安が発生し,同時に身体的な表出につながる。
GABA作動性神経系は,大脳皮質,海馬,扁桃体,視床,小脳,脊髄後角など中枢神経の広範囲に存在し,そこから放出されたGABAがGABA受容体に作用し不安関連機構を抑制する。
GABA受容体にはA,B,Cのサブタイプが存在する。BZsは主にGABAA受容体に結合しGABAへの親和性を高め,抗不安,催眠,筋弛緩,抗痙攣作用を引き起こす(図1)1)。