性感染症のひとつであり,梅毒トレポネーマが皮膚や粘膜より侵入し,血行性・リンパ行性に散布され,侵入局所および全身の各部位に症状が発現する全身性の感染症である。
1948年の約22万例から減少し,2000〜12年は1000例未満となった。その後は増加し,2018年は7007例に達した。2019,2020年はやや減少したが,2021年は7978例,2022年は1万3228例と急増している。
感染機会から3~4週間後に,一次病変として性的接触のあった粘膜や皮膚に初期硬結や硬性下疳,無痛性の鼠径部リンパ節腫脹をきたす。約3カ月後に,皮膚バラ疹,手掌・足底の乾癬や口腔粘膜疹などの二次病変をきたす。多彩な病態を示し,頭痛や微熱のみ等の梅毒に非特異的な症状だけの場合もある。
活動性梅毒(治療を要する梅毒)の病期分類として,感染から1年未満の早期梅毒(第1期,第2期),1年以上経過した後期梅毒があり,さらに活動性梅毒が適切な治療により治癒状態となったものを陳旧性梅毒(治療が不要な梅毒)とする。早期梅毒は性的接触感染および母子感染の可能性があるが,後期梅毒は性的接触感染の可能性は低いが,母子感染をきたす恐れがある。
病期以外の分類として,神経梅毒,潜伏梅毒,先天性梅毒,眼梅毒や耳梅毒といった主たる罹患臓器別の診断名がある。
きわめて多彩な臨床像を示し,非特異的な症状のみの場合もある。性感染症の感染機会があれば,梅毒の可能性も想定すべきである。感染機会の有無,特異的・非特異的症状と血液梅毒抗体検査により総合的に診断する。
血液梅毒抗体検査には,梅毒トレポネーマ抗体(TPHA,TPPA,TPLA,TP抗体,FTA-ABSなど)と梅毒の活動性を示す非トレポネーマ脂質抗体(RPR)がある。いずれも2倍系列希釈法(用手法)と自動化法があるが,自動化法が勧められる。
ごく初期の段階では,梅毒トレポネーマ抗体とRPRの両方が陰性の場合もある。従来は感染後にRPRが先に陽性となるとされていたが,自動化法では梅毒トレポネーマ抗体が先に陽性となる場合もあり,現在は特異度も高い梅毒トレポネーマ抗体の自動化法が重要視されている。
残り1,294文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する