バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin resistant Enterococci:VRE)により引き起こされる感染症で,バンコマイシンをはじめとするグリコペプチド系薬剤に耐性を持ったグラム陽性球菌の腸球菌属(Enterococcus spp.)が原因となる。敗血症,カテーテル菌血症,骨髄炎,腹膜炎,心内膜炎などの重篤な感染症を引き起こす。
消化管内および陰部・泌尿器の常在菌であり,臨床的に問題となる菌種の大半はE. faecalisとE. faeciumである。
薬剤感受性検査にてグリコペプチド耐性が認められたら,可能な限り遺伝子検査により耐性遺伝子であるvan遺伝子(vanA/vanB)を確認する。これらの遺伝子はプラスミドを介して他の腸球菌(vanC陽性のE. casseliflavus,E. gallinarum,E. flavescensなど)にも伝達し,軽度バンコマイシン耐性から高度耐性へと変化する(例としてvanB/vanC陽性VRE)。
血液,髄液,骨髄などの無菌検体からの検出は感染症を意味するが,腹腔内や皮膚軟部組織の感染症などの常在菌が存在する場所での感染症では,菌が分離されても起炎菌の判断は難しい。すなわち,VRE検出≠感染症である。
感染症か保菌なのかの鑑別が最初で,保菌は治療しない〔例:下痢をしている便からのVRE検出は保菌であり,下痢の原因(抗菌薬関連下痢症やディフィシル腸炎など他の原因)を検索する〕。
VRE感染症であることが疑われた時点で,ペニシリン感受性のE. faecalisかそれ以外なのかで,治療方針が大きく変わる。E. faecalis以外であればリネゾリドなどの抗VRE薬を選択する。
常在菌が存在する場所の感染症で,腸球菌以外のグラム陰性菌などが同時に複数検出されている場合は,腸球菌以外の治療をすることで改善することがある。
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