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【書評】jmedmook87 触診・徒手検査とその先にある診断戦略を網羅『整形外科の触診・徒手検査』

No.5197 (2023年12月02日発行) P.67

藤田浩二 (東京医科歯科大学オープンイノベーションセンター 医療デザイン部門教授)

登録日: 2023-11-29

最終更新日: 2023-11-28

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テクノロジーの進展により、MRIや超音波検査などで得られる医療画像は以前と比較にならないほど高解像度になり、多くの新たな発見を可能にしています。一方で、患者さんの自己申告する症状と身体所見が最も重要であるという、医療の基本原則は変わりません。画像検査の前に行われるべき、患者さんの症状に基づく触診・徒手検査のスキルは、これからも変わらぬ価値を持っています。

本書は、整形外科診療の基盤となる症状に基づいた触診・徒手検査に焦点を当てています。特殊な機器に依存せずに、医師の手を使って症状を把握し、診断を下すプロセスは、正確な技術と理解を要求されます。本書は、そのような技術を磨くための知識を提供し、整形外科医が日常的に遭遇する様々な症例に対する的確な診断戦略を構築するための経験を支援することを目的としており、実際の患者の主訴や症状から出発し、疾患に至るまでの診断プロセスを、フローチャートという形で視覚的にも理解しやすい方法で示しています。これにより、読者は触診・徒手検査の各ステップの背後にある理論だけでなく、臨床での具体的な適用方法も学ぶことができます。

具体的な検査手順と、それに基づく診断への道筋を示すことで、初学者は臨床技術の向上を図ることができ、ベテランは知識の再確認ができるよう配慮されています。

代表的な障害や疾患に対する触診・徒手検査のプロトコルに加えて、各検査の意義や診断に至る考え方が詳述されているため、読者はただ単に手技を学ぶのではなく、それらがどのように全体の診断戦略に統合されるかの理解を深めることができます。手技を記載した教科書は多くありますが、本書のように診断につながるフローを示したものは他にはなく、実践的なガイドとして重宝されるでしょう。

医療従事者、特に整形外科医、理学療法士、医学生、初期研修医にとって、日常の診療における重要な一冊となることは間違いありません。

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