厚生労働省は11月30日の社会保障審議会介護給付費分科会に、処遇改善関連加算を一本化して創設する新加算の名称を「介護職員等処遇改善加算」(以下、新加算)とし、(Ⅰ)~(Ⅳ)の4段階の加算区分を設ける案を提示した。新加算への完全移行は2025年度から。24年度は準備期間と位置づけ、円滑移行のための各種経過措置を設ける。
新加算の4区分の考え方は、最も基本となるのが「新加算Ⅳ」で、介護職員の基本的な待遇改善・ベースアップ等を評価。その上の「新加算Ⅲ」は、「新加算Ⅳ」の要件を満たした上で、資格や経験に応じた昇給の仕組みの整備を評価する。同様に「新加算Ⅱ」は、「新加算Ⅲ」の要件を満たした上で、総合的な職場環境改善による職員の定着促進を評価。最も高度な「新加算Ⅰ」は、「新加算Ⅱ」の要件を満たした上で、事業所内の経験・技能のある職員を充実させることを評価する。
現行の加算との対応と、訪問介護を例にした加算率は、「新加算Ⅳ」:介護職員処遇改善加算(Ⅱ)+介護職員等ベースアップ等支援加算=12.4%、「新加算Ⅲ」:介護職員処遇改善加算(Ⅰ)+介護職員等ベースアップ等支援加算=16.1%、「新加算Ⅱ」:介護職員処遇改善加算(Ⅰ)+介護職員等特定処遇改善加算(Ⅱ)+介護職員等ベースアップ等支援加算=20.3%、「新加算Ⅰ」:介護職員処遇改善加算(Ⅰ)+介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)+介護職員等ベースアップ等支援加算=22.4%―となる。
一本化に伴い、現行の加算の要件も見直す。たとえば「職場環境等要件」のうち生産性向上や経営の協働化に関する項目を拡充。職種間配分ルールは「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することが望ましい」に統一した上で、事業所内での柔軟な配分を認める。現行のベア加算のベースアップ等要件(加算額の2/3以上をベアに充当)は廃止し、新加算のすべての加算区分で「新加算(Ⅳ)の加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てること」(月額賃金改善要件)を新たに求める。
新加算では、すべての加算区分に現行の「ベア加算」が組み込まれるため、一本化時点でベア加算を取得していない事業者が新加算を取得する場合には、増加する収入のうち現行のベア加算分に相当する加算額の2/3以上を月額賃金の改善に充てることを求める。また「処遇改善加算(Ⅲ)」は実質的に廃止となるため、これまでこの加算を取得していた事業所は、一本化に合わせて加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の要件を新たに満たす必要がある。
このため厚労省は、①「ベア加算」相当の2/3以上の新たな月額賃金改善、②昇給の仕組みの整備、③賃金体系の整備等及び研修の実施等―を新たに満たす必要がある場合について、24年度中はこれらの適用を猶予することを提案。見直し後の職場環境等要件と新設の月額賃金改善要件の適用も24年度中は猶予する。現行加算を取得済みの事業者が24年度中は現在と同等の加算率が維持できるようにする特例的な加算区分(経過措置区分)を設定する案も示した。