血液腫瘍領域では,原疾患のみならず,薬剤そのものの作用に伴う免疫抑制と関連した感染症に注意が必要かと思います。近年,様々な新規薬剤が血液腫瘍領域でも承認されている(もしくは承認される可能性が高いと推測されている)と思いますが,感染症のリスクという観点から,特に感染症科医が押さえておくべき重要な薬剤について,飯塚病院血液内科・帆足公佑先生にご解説をお願いします。
【質問者】武田孝一 がん研有明病院感染症科医長
【急性骨髄性白血病(AML)治療におけるFLT3阻害薬と感染症の関連について理解を深めよう】
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の治療は,長い間アントラサイクリン系抗癌剤とシタラビンを併用した寛解導入療法および高用量シタラビン等の地固め療法が行われてきました。しかし近年,分子標的治療薬の登場により治療内容に変化が生じています。
欧米では日本に先んじて寛解導入療法にFLT3阻害薬であるmidostaurinを併用する方法1)が導入され,追加効果を示し承認されています。しかし,本邦でこれらの併用療法はできず,古典的寛解導入・地固め療法の選択肢しかない状況が長く続いていました。しかし,2023年5月にわが国で「FLT3-ITD変異陽性のAML」に対してキザルチニブが承認され,古典的寛解導入・地固め療法に併用できるようになりました。この承認根拠となる第3相試験であるQuANTUM-Firstでは,非併用群と比較し有意な全生存期間の改善をもたらしました2)。
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