SUMMARY
2040年に向けてプライマリ・ケア従事者に求められることについて,様々な視点から展開するシリーズ。本稿では,「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」のとりまとめをきっかけに,頭の体操を始める。
KEYWORD
2040年
団塊ジュニア世代が65歳以上になりはじめる年。少子化で様々な産業の担い手が減少するとともに,団塊世代に次ぐ人口のボリューム層が高齢者になるタイミングであり,様々な社会変革のひとつのゴールと設定される時期。
PROFILE
2009年長崎大学医学部医学科卒。家庭医療専門医。修士(社会疫学),医学博士(公衆衛生学)。多職種連携を得意とし,離島から都市部まで様々なニーズのあるプライマリ・ケアに従事している。
POLICY・座右の銘
早く行きたいなら一人で行け,遠くへ行きたいならみんなで行け(アフリカの諺)
今回から8回にわたって,2040年に向けてプライマリ・ケアでどのような準備が必要かについて,行政や経済学の立場などマクロな視点とともに,現場でプライマリ・ケアに携わる様々な職種の視点から紹介する。
2025年をめざして進められてきた,社会保障と税の一体改革や地域包括ケアの構築の目途が目前にせまり,次は団塊ジュニア世代が高齢者になる2040年の未来像に向けて,より解像度を上げて準備をしていくことが求められている。
医療分野の中で,社会の変化に最前線で対応するプライマリ・ケアの現場では,既に目の前で起きていることも加味し,2040年に向けて何を準備していく必要があるのだろうか。頭の体操のきっかけとして,2019(令和元)年5月の厚生労働省の「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」のとりまとめを引用する1)。
人口動態から2040年を展望すると,高齢者人口の伸びは落ち着き,現役世代(担い手)が急減することが予想される。そのため社会保障や雇用を維持するための方策としては,大きくわけて,総就業者数を増やすとともに,より少ない人手でも回る医療・福祉の現場を実現することの2点が必要と示されている。
具体策として,今後,国民誰もが,より長く,元気に活躍できるよう,以下のような取り組みを進めることが必要であると示されている(図1)1)。
1. 多様な就労・社会参加の環境整備
2. 健康寿命の延伸
3. 医療・福祉サービスの改革による生産性の向上
4. 給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保