外耳道湿疹は,骨部外耳道や軟骨部外耳道皮膚の表層(表皮・真皮上層)に生じた炎症であり,多くは物理的な刺激に起因する。素因としてアレルギー体質を伴う場合も多い。細菌感染を伴う限局性外耳道炎,びまん性外耳道炎,外耳道真菌症や悪性外耳道炎とは区別する。
主訴はかゆみが多いが,同部の灼熱感や疼痛感の訴えもある。鼓膜は正常が多く,軟骨部外耳道の皮膚の発赤・腫脹,水疱,びらん,漿液性の分泌物をなす。二次感染により主訴を耳痛とし,軟骨部外耳道の発赤・腫脹を呈す限局性外耳道炎(耳癤)や,骨部外耳道を中心に全体的に発赤・腫脹・皮膚表面のびらんと漿液性~膿性耳漏を呈すびまん性外耳道炎が生じる。外耳道湿疹では難聴を呈することはないが,外耳道炎を併発した場合は伝音難聴を伴う場合もある。
鑑別が必要な疾患として,外耳道真菌症と耳性帯状疱疹が挙げられる。真菌症では強いかゆみの訴えと骨部外耳道から鼓膜にかけて真菌塊が,耳性帯状疱疹では間欠的な激痛の訴えと外耳道から鼓膜に水疱やびらんが観察されることが特徴である。
原因として,頻度が高いものは耳掃除癖である。その他,シールドタイプの耳栓使用や,中耳炎の耳漏やシャンプーなどの化学物質・水泳による刺激や,かゆみを伴う全身疾患(アレルギー性皮膚疾患,血液透析,肝疾患,糖尿病など)が挙げられる。詳細な問診で外耳道湿疹の原因を把握する。
視診では,湿疹部位の同定とウイルス・細菌・真菌感染の有無を的確に判断する目的で,顕微鏡下に外耳道全体を観察する。外耳道は全体が湿潤し,全周性もしくは局在性の痂皮の付着を認めるため,痂皮を丁寧に除去し,皮膚所見をとることが重要である。症例によっては鼓膜表面まで耳掃除での刺激がある場合があり,その場合は鼓膜の表面に膜様痂皮の付着と鼓膜の肥厚が認められる。
検査項目としては,二次感染を疑う場合は,細菌培養同定検査を行う。清潔操作のもとに検査を施行し,コンタミネーションに気をつける。抗菌薬使用後の検査では起炎菌の同定が困難であることを理解し,検査は初診時に行う。
問診,視診から外耳道湿疹と診断された場合は,外因(頻回な耳掃除,耳栓など)の除去を指導し,外来処置(週1~2回)で,3%過酸化水素水や副腎皮質ホルモン含有軟膏を綿棒で病変部に塗布する。処方薬としては鎮痒消炎外用薬を処方する。難治の場合は,外来での処置を繰り返すとともに,二次感染の併発に対しステロイド含有抗菌薬を塗布し,ステロイドおよび抗菌薬の点耳薬を処方する。かゆみが強く,耳掃除を中止できない場合は抗ヒスタミン薬内服を開始する。痛みの程度に応じて鎮痛薬の内服も考慮する。真菌の付着が疑われた場合は,真菌塊を除去した後に抗真菌薬軟膏の塗布を開始する。鼓膜穿孔が存在する場合には耳毒性のある抗菌薬を含んだ点耳液や軟膏の使用は行わない。
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