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【識者の眼】「新コアカリとコミュニティ・プリセプターの役割」松村真司

No.5210 (2024年03月02日発行) P.58

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2024-02-15

最終更新日: 2024-02-26

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No.5146の本欄で紹介したように、医学生が卒業時までに身につけておくべき必須の実践的診療能力に関する学修目標等を示した2022年度改訂版の医学教育モデル・コア・カリキュラム(以下、新コアカリ)が、1年強の周知期間を経て、24年度入学者のカリキュラムから適用される。現在、各大学では本年4月に向けて新コアカリに基づいた教育内容の整備が急ピッチで行われている。

新コアカリの理念である「未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」に沿い、新設された項目の1つが「総合的に患者・生活者をみる姿勢(GE)」である。新コアカリは、わが国の少子高齢化がピークを迎え、多疾患併存患者が増加する2040年以降の社会を見据えて策定されている。このような時代に活躍できる医師の素養として、GEが基本項目として盛り込まれたのはしごく妥当なことである。

GEの下位項目の1つに「地域の視点とアプローチ」が設定されている。これは「地域の実情に応じた医療・保健・福祉・介護の現状及び課題を理解し、医療の基本としてのプライマリ・ケアの実践、ヘルスケアシステムの質の向上に貢献するための能力を獲得する」と説明されている。その具体的な学修目標が「プライマリ・ケアにおける基本概念」「地域におけるプライマリ・ケア」「医療資源に応じたプライマリ・ケア」「在宅におけるプライマリ・ケア」である。これを達成するには、大学だけの教育では不十分であるのは明白であり、地域の病院・診療所・保健所など、多様な学習機会を提供しなければならない。そしてこのような学習機会を十分に提供するには地域における指導医を確保することが必須になる。

診療所等の地域の医療機関における卒前教育はわが国でも古い歴史を持ち、それは時代とともに拡充してきている1)2)。国外においては地域で学生に教育を行う指導医をコミュニティ・プリセプターと呼ぶが3)4)、地域の指導医を確保し、一定の質をもって教育活動を継続するためには、多くの障壁があることが指摘されている5)

新コアカリに沿ったカリキュラムの構築のために、このような地域の指導医=コミュニティ・プリセプターを確保し、その質を担保することは喫緊の課題である。国内外の先行事例を参考にし、すべての関係者の協力を得て、わが国の実情に合ったカリキュラムの策定を急がなければならない。

【文献】

1)鈴木荘一, 他:医学教育. 1996;27(4):253-7.

2)プライマリ・ケア教育連絡協議会卒前教育ワーキンググループ:診療所で教えるプライマリ・ケア─地域で医師を育てるために. 前沢政次, 他, 編. プリメド社, 2007.

3)Alexandraki I, et al:J Gen Intern Med. 2023;38(6):1501-15. doi:10.1007/s11606-023-08026-5

4)Brink D, et al:Fam Med. 2018;50(5):359-63.

5)Hobson WL, et al:Fam Med. 2021;53(2):133-8.

松村真司(松村医院院長)[総合的に患者・生活者をみる姿勢

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