今般発生した能登半島地震災害では、発災翌日の1月2日に日本環境感染学会(JSIPC)の泉川公一災害時感染制御検討委員会委員長(長崎大)が自ら長崎から空路富山空港を経由し、先遣班(PreDICT、プレディクト)として石川県庁に赴いた。医療調整本部に登録した後、陸路で輪島市門前町に到達し、被害状況を現認した上で四柳宏JSIPC理事長(東京大医科研)との協議の結果、DICTの正式派遣を決定した。
当初は委員会メンバーを中心とした小規模なコンサルタントチームの現地派遣を開始したが、災害の規模に鑑み、研修修了者で構成されるアクティブメンバーに2泊3日のシフトでの参集を依頼したところ、当初、2月初旬までのローテーションスケジュールが設定可能となり、現地での感染制御支援活動が活発化している。
その内容は、現地からの感染制御に関する相談に回答するとともに、制御に必要な感染対策物資を企業の支援チームから調達して、感染制御担当者に直接送り届ける、さらに感染制御資材の1つである啓発用のポスターやマニュアル類の緊急編纂を後方支援の教育委員会に依頼し、学会のウェブサイトやSNSを通じて現地に提供する活動を行っている。このような活動は現地の実情に合わせて柔軟に更新・変更され、さらに迅速な情報提供を可能にしており、これまでの定型的な感染対策や教育のみでなく、よりアクティブ(能動的)かつアダプティブ(適時・適切)な支援を可能としている。
DICTは東日本大震災での経験に端を発し、多くの災害時の実務を経て、現在はいわば日本全土の災害対応にかかる有事に備える平時体制とソフト・パワー強化の一環として重要な仕組みとなることをめざしている。(「大規模災害と感染制御」の項終わり)
(※)DICT活動にご興味のある方は一般社団法人日本環境感染学会宛メールでお問合せください。
jsipc@kankyokansen.org
櫻井 滋(東八幡平病院危機管理担当顧問、日本環境感染学会災害時感染制御検討委員会 副委員長)[被災地の感染制御支援]