小児の貧血の原因は多岐にわたり,病態も赤血球の喪失・分布異常,破壊亢進,産生障害など様々である。貧血の背景に先天性の素因がある可能性も念頭に置いて,診断・治療にあたる必要がある。
動悸・息切れ・易疲労性・めまいなど。乳児では活気不良や哺乳量減少を契機に気づかれることもある。
貧血症状の発症時期,下血や月経過多などの出血エピソード,哺乳・食事内容の偏り,先行感染の有無,黄疸・胆石・脾摘術の家族歴などは,鑑別診断の際に有用なので問診で確認する。身体診察では黄疸・肝脾腫・リンパ節腫大などを評価する。
乳幼児はヘモグロビン11g/dL以下,学童は12g/dL以下が貧血の目安となる。まずは平均赤血球容積(MCV)と網赤血球数から鑑別を絞った上で,小球性であれば鉄 ・フェリチン,正球性であれば出血・溶血所見,大球性であれば葉酸・ビタミンB12などを確認して,原因検索を進める。診断困難例では,専門医に相談の上で骨髄検査などの精査を行う。
貧血の原因によって治療方針が大きく異なるため,貧血の鑑別診断が重要である。
小児の貧血で最も頻度が高いのは鉄欠乏性貧血であり,身体が急激に成長する乳児期や思春期に好発する。鉄欠乏による貧血では,食事療法や鉄剤の内服で貧血の改善が得られることが多い。出血による貧血の場合には,出血部位の同定が重要であり,止血のための治療を関係診療科と連携して行う。溶血や骨髄不全による貧血が疑われる場合は,病型や基礎疾患の検索が必要となるため,早期に専門医へ紹介する。
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