【概要】介護療養病床など介護保険三施設の収支差率が前回調査から軒並み減少したことがこのほど、厚労省が発表した2014年度介護事業経営実態調査により明らかになった。
厚労省は10月15日の介護給付費分科会に経営実態調査の結果を報告した(別掲)。調査は2015年度介護報酬改定の基礎資料を得るため、個々のサービスの費用の実態を明らかにすることが目的。全国3万3339施設を対象に、今年3月の1カ月間における事業の実施状況、収入・支出の状況を調査した。
介護保険三施設の収支差率(収入に占める利益の割合)は、介護療養病床が8.2%(前回の2011年度調査から1.5ポイント減)、老健が5.6%(同4.3ポイント減)、特養が8.7%(同0.6ポイント減)だった。
前回の2012年度介護報酬改定で導入された定期巡回・随時対応は0.9%、複合型はマイナス0.5%と、どちらも低水準にとどまっていた。
前回調査と比較可能なサービスのうち、居宅介護支援と福祉用具貸与を除くサービスの収支差率は軒並み5%以上となっている。調査結果を基に財政審は8日、介護報酬の大幅な引下げを提案。一方、介護提供者側の団体はこれに反発を示しており、改定率を巡る攻防は年末まで続く。
同日の会合では今後の議論の共通認識となる「基本的な視点」を厚労省が提案し、了承された。
視点は(1)地域包括ケアシステムの構築に向けた在宅中重度者や認知症高齢者への対応、(2)介護人材確保対策、(3)サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築─の3点。中でも(2)の介護人材の確保は「最重要の課題」としている。
●病・診の訪問看護引上げ
22日の介護給付費分科会ではサービスごとの具体的な議論に着手。厚労省は病院・診療所からの訪問看護に対する報酬を引き上げる方針を打ち出した。
訪問看護の報酬はサービス提供時間に応じた価格が決められており、提供時間が同じ場合、病院・診療所の報酬は訪問看護ステーションより低く設定されている。医療機関からの訪問看護はこの10年間で事業所数が半減しており、今後の訪問看護ニーズ増大に応えるため、報酬引上げにより病院・診療所からの訪問看護を拡大するのが狙いだ。