私が理事長を務める日本プライマリ・ケア連合学会は2年ごとに役員改選を行っている。これは通常の学会と変わらないが、ユニークなのは選挙制度である。
まず、全学会員が参加する代議員選挙が実施される。そこでは会員数の1/10の代議員が1000名程度選出される。そして、代議員が投票権を持つ役員選挙が実施されるのだが、そこでは全国枠と地方枠があり、全国的に知名度が高い方と地方でしっかりと実績を残している方がおよそ1対1の比率で選ばれる。また、新たに導入されたクオータ制では、男女いずれも25%以上、そして医師以外の職種が10%以上選出される枠組みも盛り込まれた。結果として、今回の選挙では、約40名の役員のうち10名あまりが交代するという人材の新陳代謝も進んだ。
振り返ると、当学会の母体となる日本プライマリ・ケア学会は地方選出のみの枠組みだった一方、日本家庭医療学会は全国選出のみの枠組みだった。2010年の合併の際にそれらを統合した選挙制度が誕生したわけだが、14年の時を経て少しずつ改正を加え、現在の形へと完成してきた。一見複雑だが、そこには多様な出自の役員を選出するという1つの思想が埋め込まれている。会員が1万2000人という規模の組織になると、理事長1人ではなく、理事会全体がどのような意識で議論を展開し、会員の声をくみ取っていくか、また社会の要請に反応していくかが重要だと痛切に感じる。それゆえ、役員選出のプロセスへのこだわりを持つ意義は十分にあるだろう。
私が役員を務める団体は他にもいくつかあるが、こうした選挙制度を持つ組織は1つもなく、執行部の要請で理事に招請されるケースがほとんどである。これはこれで安定した役員体制を維持する意義はあるが、執行部の意向と異なる考えを持つ者や若い世代の人材を役員に加えることは難しくなり、組織の新陳代謝を阻害することにつながるだろう。その場合は、執行部が意識的に多様な人材を役員に加える姿勢が重要になる。ただ、これも簡単なことではないのはご存じの通りである。
以上、学会組織の役員選出のあり方について論考した。皆さんもご自身の所属組織の役員選出のあり方をぜひ見つめて頂ければと思う。実は、組織の課題や限界がそこに表現されているかもしれない。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]