眼窩骨折とは,眼窩を構成する骨が外力により骨折したものの総称である。そのうち,眼窩内圧が上昇して眼窩内組織である外眼筋,筋間膜,神経,眼窩脂肪などが眼窩外へ脱出するタイプのものを眼窩ブローアウト骨折と言う。眼窩ブローアウト骨折は,眼球運動障害,眼球陥凹などの障害をきたす。臨床症状,眼科検査の結果に加えて,眼窩骨折の形状によっても手術適応や手術時期が異なるため,CT検査による画像診断が重要である。
眼瞼腫脹,眼窩部皮下出血,眼球運動障害に伴う複視,眼球運動時痛,悪心,嘔吐,頭痛,眼球陥凹,患部の頬部・上口唇のしびれなどがある。
視力検査,眼圧検査に加えて,Hess赤緑試験,両眼単一視野検査が重要である。これらの検査で他覚的な眼球運動障害,複視の範囲を評価することができる。
画像を撮るときは,眼窩横断基準面に沿って,両方の視神経の全長が見えるように撮影し,これを再構成して水平断,冠状断と併せて眼窩3方向で評価する。骨条件に加えて,軟部組織条件での評価で,眼窩内組織の偏位を確認する。
手術の適応は,眼球運動障害(複視)と眼窩軟部組織の偏位や絞扼の有無により,総合的に評価して決定する。眼窩CT検査は必須で,特に若年者に多い外眼筋や軟部組織の絞扼がある閉鎖型骨折の場合は緊急手術の適応であり,時期は早ければ早いほどよい。
また,骨折片の偏位や眼窩内組織の脱出があっても眼窩内組織の絞扼がない開放型骨折の場合は,緊急手術の適応ではないが,眼球陥凹や骨折に伴う複視を生じることもあるため,基本的には整復することが望ましい。この場合はおおむね2週間以内の手術が望ましい。
若年者やスポーツ選手などには,受傷時や初診時にquality of visionの低下の自覚がなくても,今後不可逆的な眼球運動障害が生じる可能性があることを説明し,手術を勧める。しかしながら,高齢者やquality of visionの低下の自覚がなく,手術を望まないときには,経過観察とする場合がある。
手術をせずに経過観察となった場合にも,眼窩腫脹が消失してから眼球運動障害や眼球陥凹を自覚する可能性があるため,腫れが引く1週間後に再度眼科検査を行い,改めて手術の適否を検討する。
残り959文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する