細菌性結膜炎は,結膜での細菌の増殖とそれに対する生体の免疫反応による病態で,粘液膿性眼脂を伴うカタル性結膜炎を呈する。典型例の起因菌としては,黄色ブドウ球菌・肺炎球菌・インフルエンザ桿菌などが多い。
特殊な例として淋菌性の結膜炎があり,頻度は低いが重篤で,急激に悪化して角膜穿孔を起こす。また,やはり性感染症であるクラミジアも結膜炎をきたす。下眼瞼結膜円蓋部の大型濾胞が特徴である。
結膜炎は,おおまかに言うと,ウイルス性では充血や異物感が,細菌性では眼脂が,アレルギー性では瘙痒感がそれぞれ強いことがポイントとなる。
細菌性の診断では塗抹検鏡と培養が重要であるが,日常臨床では培養を行わず,empiricな治療が行われることも多い。クラミジアは培養ではなく,PCR法などによりそのDNAを検出する。
通常は自然に軽快する疾患であるが,抗菌薬点眼による治療(1日3~4回)で速やかに軽快が得られる。しかし最近,種々の耐性菌が増加しており,注意が必要である。また,培養については,検出された菌が必ずしも起因菌ではない点に留意が必要である。
注意を要する起因菌について以下に述べる。
ブドウ球菌はmec-A遺伝子を有するとβラクタム系に耐性となるが,それだけでなくフルオロキノロン系抗菌薬のターゲットであるDNA gyraseとtopoisomerase Ⅳにも変異をきたしてくることが多く,両系統に耐性となる1)。このような場合,しばしばクロラムフェニコール点眼が有効であるが,抗菌力という点からは1%バンコマイシン眼軟膏がまさっている2)。
コリネバクテリウムは結膜の常在菌であるが,最近,結膜炎の起因菌になると報告されている3)。高齢者の軽度の結膜炎が多い。
コリネバクテリウムにはDNA gyraseの遺伝子はあるが,topoisomerase Ⅳの遺伝子を持っていない。そのため,フルオロキノロン耐性が高率に生じていることが報告されている。一方,セフェム系には感受性があるので,セフメノキシム点眼が有効である。
眼科での近年の報告例のほとんどが,フルオロキノロン耐性症例である。治療は,セフメノキシム点眼とセフトリアキソン点滴静注による。
クラミジアに対してはテトラサイクリン系,マクロライド系,フルオロキノロン系の抗菌薬が有効である。しかし,保険適用のある点眼薬はなく,眼軟膏(エリスロマイシン,オフロキサシン)1日5回の6~8週間投与という長期の治療が必要となる。
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