呼吸器内科領域で遭遇する肺真菌症には,肺アスペルギルス症,肺クリプトコックス症,ニューモシスチス肺炎などが含まれるが,本稿では最も頻度が高い肺アスペルギルス症について述べる。近年,肺アスペルギルス症は増加している。その病態は急性型と慢性型に分類され,慢性型である単純性肺アスペルギローマ(simple pulmonary aspergilloma:SPA)と慢性進行性肺アスペルギルス症(chronic progressive pulmonary aspergillosis:CPPA)は,肺の器質的病変にアスペルギルスが腐生することによって生じ,急性型の侵襲性肺アスペルギルス症(invasive pulmonary aspergillosis:IPA)は,免疫不全宿主において,アスペルギルスが肺へ組織侵襲することによって生じる。
肺アスペルギルス症は肺感染症であり,治療に際して原因真菌を同定することが望ましいが,患者の状態によっては喀痰が得られない場合や,気管支鏡による侵襲的な検査が難しいこともあり,症状,画像,血液検査から臨床診断をせざるをえないことも多い。
SPAは,無症状で肺に空洞病変を有する患者において,画像的に空洞内に真菌球を認め,血清抗アスペルギルス抗体が陽性となる。
CPPAは,糖尿病やステロイド治療などの軽度の免疫不全を有する患者が,亜急性から慢性の呼吸器症状と全身症状を伴って発症し,画像では真菌球と空洞壁の肥厚や空洞周辺の肺浸潤影を認め,血清抗アスペルギルス抗体が陽性となる。
IPAは,高度の免疫不全を有する患者が,急激な呼吸器症状と全身症状で発症し,数時間~数日の経過で画像が増悪する。画像では,胸部CTで発症早期の結節影や空洞影周囲のhalo sign,好中球回復期のair crescent signが特徴的である。血清抗アスペルギルス抗体は陰性であり,血清中のβ-D-グルカンとガラクトマンナン抗原が陽性となる。
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