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百日咳[私の治療]

No.5223 (2024年06月01日発行) P.56

古市美穂子 (埼玉県立小児医療センター感染免疫・アレルギー科医長)

登録日: 2024-06-04

最終更新日: 2024-05-28

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  • Bordetella pertussisによる呼吸器感染症で,咳が100日ほども続くことから名づけられた。百日咳ワクチンは4種混合ワクチンに含まれているが,初期免疫を獲得する前である生後3カ月未満では,無呼吸発作やチアノーゼ,痙攣,呼吸停止による死亡率が高い。感染症法5類全数把握疾患である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    典型的な症状は,感冒症状が1〜2週間(カタル期),その後,乾性咳嗽と発作性の咳が3〜6週間続く(痙咳期)。発熱は通常認めない。乳児期早期は咳嗽を有さず,無呼吸発作,チアノーゼで発症することもある。百日咳含有ワクチン(4種混合ワクチン,3種混合ワクチン)接種者は症状が軽く,非典型的となる。

    【検査】

    ワクチン未接種の典型例では,75%でリンパ球優位の白血球上昇を認める。診断目的の検査は,遺伝子検査や抗原検査が主に用いられる。遺伝子検査はLAMP法,PCR法が保険適用であり,発症後3週以内に実施する。イムノクロマト法による抗原検査は2021年より保険適用となったが,パラ百日咳にも交差することが課題である。血清診断である抗PT-IgG抗体は発症2週間を過ぎた場合に行うが,免疫系が十分に発達していない乳児およびワクチン接種後1年未満の患者には推奨されていない。後鼻腔培養検査は特異性に優れるが感度は6割程度と低く,抗菌薬内服によりさらに低下する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    長引く咳嗽や乳児期早期の無呼吸では,百日咳を疑い検査を行う。乳児期早期の重症例ではワクチン接種歴や周囲流行,症状から事前確率を見積もり診断前に治療を行うこともある。

    カタル期における抗菌薬投与は症状軽快が期待できるが,痙咳期に入るとその効果は乏しく,二次感染予防が目的となる。治療薬の選択は,年齢や副作用からクラリスロマイシン,アジスロマイシン,エリスロマイシンから選択する。アジスロマイシンは内服期間が最も短いが保険適用外である。エリスロマイシンは肥厚性幽門狭窄症のリスクが高いため,新生児では推奨されていない。

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