全般不安症(全般性不安障害)(generalized anxiety disorder:GAD)は,慢性的にコントロールできない心配(予期憂慮)によって,睡眠障害,筋緊張などの身体症状や集中困難をきたす障害で,深刻な社会的・職業的機能障害,他の精神疾患や身体疾患との併存,自殺の危険性の上昇につながる1)。しかし,わが国の臨床現場での認知度はいまだに低く,GAD以外の疾患として治療されている場合も多い1)。
GADの中心症状は心配(予期憂慮)であるが,心配は他の精神疾患や身体疾患でもよくみられる非特異的症状である。心配の内容の広がりやそれによる障害度に関し慎重に診断する。最低限,DSM-52)の診断基準を満たすことが必要である。それによれば,多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配が6カ月以上続き,同時に①落ちつきのなさや緊張感,②易疲労感,③集中困難や心の空白感,④易怒性,⑤筋肉の緊張,⑥睡眠障害のうち少なくとも3つを伴うことが条件である。また,GADが生涯単独であることは少なく,他の精神疾患との併存率は高い1)。さらに,うつ病にGADが併存すると,うつ病の重症化につながるので,臨床上GADの有無をチェックすることは有用である1)。
GAD発症の危険因子として,女性,最近の有害ライフイベント,慢性身体疾患,他の精神疾患,貧困,幼少期の親の死や感情的サポートの低さ,親の精神疾患などが挙げられている。つまり,GADは多元性のストレス関連感情障害と言うことができ,何らかの適切な心理社会的介入が重要で,薬物療法だけでは不十分と言える。
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