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自然毒による食中毒(キノコ,フグ,シガテラ中毒)[私の治療]

No.5224 (2024年06月08日発行) P.42

佐藤幸男 (慶應義塾大学医学部救急医学教室講師)

登録日: 2024-06-05

最終更新日: 2024-06-04

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  • いずれの自然毒も解毒薬がないため,重篤な麻痺に対する人工呼吸管理を含めて支持療法(対症療法)が中心である。

    ▶病歴聴取のポイント

    原因物質の特定には摂食した食物の同定が重要であり,現物あるいは撮影した写真を持参してもらうと原因物質同定の一助となる。

    キノコ中毒の症状は以下の時間経過で出現する。まず,6~24時間の潜伏期を経て消化器症状(心窩部痛,嘔気,嘔吐,水様性下痢),12~48時間の潜伏期を経て肝細胞障害型の肝炎,24~72時間の潜伏期を経て進行性の急性肝不全や腎不全(凝固障害,腎炎,肝性昏睡,脳症,脳浮腫)をきたし,時に致命的となる。致命的となる場合のほとんどは,テングタケ属に含まれるアマトキシンが原因である。

    魚および貝中毒は主に3つあり,テトロドトキシン(わが国では主にフグ)・シガテラ・貝類である。ほかに鯖中毒と呼ばれるものは腐敗によるヒスタミンの蓄積が原因であり,アレルギー反応に似た症状を呈する。テトロドトキシン中毒は,わが国ではフグを食するため発生し,いわゆるフグ毒と呼ばれている。致命的になりうるので注意が必要である。症状は摂取量に依存し,口唇と指先の感覚異常としびれで始まり,消化器症状は嘔気・嘔吐で,麻痺は下行性に生じる。重症例では1時間以内に急速な呼吸不全が生じる。重症度別に次の4段階評価が用いられる。grade 1は摂食後5~45分で発症し,口唇周囲のしびれ・麻痺に消化器症状(主に吐き気)を伴うことがある。grade 2は10~60分で発症し,舌や顔面のしびれ,構音障害,運動麻痺・失調をきたす。grade 3は15分~数時間後に発症し,意識は保たれるものの,弛緩性麻痺,呼吸不全,失声をきたす。grade 4は15分~24時間後に発症し,重篤な呼吸不全と低酸素血症,低血圧,徐脈,不整脈,意識障害をきたしうる。

    シガテラとは,プランクトンが産生する毒素が体内に蓄積した珊瑚礁に住む魚を摂取することで発生する食中毒で,わが国では沖縄県での発生がよく知られている。嘔吐・下痢・腹痛といった消化器症状と筋肉痛・感覚異常(冷たいものに触れたときに熱のような痛み)・不随意運動・頭痛・眩暈といった神経症状を呈することが特徴的だが,致命的となることは稀である。発症までは摂食して1~48時間後と幅がある。消化器症状が先に出現し(12時間以内),24時間で消失する。神経症状は24時間のうちに出現,口唇や四肢の感覚異常としびれで始まる。消失までには時間を要し,慢性化することが報告されている。

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