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【文献 pick up】わが国CKDガイドラインの有効性を大規模観察データで「検証」、遵守度が低いと腎機能増悪リスク高―Sci Rep誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-06-06

最終更新日: 2024-06-05

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診療ガイドラインはエビデンスに基づいて作成されるとはいえ、専門家のコンセンサスを根拠とする推奨も少なくなく、その妥当性は刊行後に検証される必要性がある[Bottrighi A, et al. 2010] 。滋賀医科大学のZannatun Nyma氏らは、わが国の慢性腎臓病(CKD)診療ガイドラインの遵守度と腎転帰の関係について大規模データを用いて検討した。遵守度が低い群では有意に腎機能増悪リスクが上昇していた。結果は5月20日、Scientific Reports誌に掲載された。他の診療ガイドラインでも同様の検証が待たれる。

【対象】

今回解析対象となったのは、日本在住のCKD 4455例である。大学系4施設の電子医療記録から抽出した。なお、以下のデータ欠落例は除外されている。すなわち、観察期間におけるeGFRと電解質、LDL-C、ヘモグロビン、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS-i)服用データ―である。

平均年齢は67.2歳、男性が53.5%を占めた。平均eGFR54.6 mL//1.73m2だった。

【方法】

これら4455例を対象に、わが国の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」遵守度の高低と「腎イベント」(eGFR<30 ml="" span="">分/1.73m2到達」、または「30%以上の低下」)リスクとの関係を検討した。

「ガイドライン遵守度」は以下8項目の目標達成の有無で評価した。すなわち、(1K濃度、(2) Na-Cl濃度、(3) RAS-i服用、(4) Ca濃度、(5) P濃度、(6) 尿酸値、(7) LDL-C値、(8) Hb値―である。1項目達成で1ポイントとし、総達成ポイント別に「0~5」、「6」、「7」、「8」の4群に分けた。

【結果】

513日(中央値)の観察期間中、4455例のうち838例(18.8%)で腎イベントを認めた。

・ガイドライン遵守度と腎イベント発生「率」

腎イベント「発生率」は、ガイドライン項目達成ポイント「05」群が最も高く、192/1000人年だった。一方、「6」群では110/1000人年、「7」群は90/1000人年、「8」群は95/1000人年だった。

・ガイドライン遵守度と腎イベント「リスク」

腎イベントの「発生リスク」を比較すると、諸因子補正後も、ガイドライン項目達成ポイント「05」群に比べ「6」群では有意に低かった(ハザード比 [HR] 0.6795%信頼区間[CI]:0.540.83)。「7」群や「8」群でも同様だった(いずれもHR0.55)。

【考察】

Nyma氏らは、ガイドライン遵守による腎への好影響が実証されたとし、ガイドラインが推奨する多面的な介入の重要性を支持するデータだと考察している。

本研究は日本医療研究開発機構と厚生労働省から資金提供を受けた。

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