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【文献 pick up】非DM血管疾患合併肥満例に対するGLP-1-RAの腎保護作用はどれほど?―RCT "SELECT" 追加解析/Nat Med誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-06-11

最終更新日: 2024-06-12

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2型糖尿病(DM)を認めないが血管疾患を合併する肥満例へのGLP-1-RAは、「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」リスクを相対的に20%低下させる(治療必要数 [NNT]67)。これが昨年の米国心臓協会(AHA)で報告され、話題を呼んだランダム化比較試験(RCT) "SELECT" の主要結果である。加えてGLP-1-RAには「腎保護作用」も期待できる可能性がある。事前設定追加解析の結果としてエジンバラ大(英国)のHelen M. Colhoun氏らが5月25日、Nature Medicine誌で報告した

【対象】

SELCET試験の対象は、2型DMは合併しないが心筋梗塞・脳卒中・症候性末梢動脈疾患履歴を有する「BMI27 kgm2」の1万7604例である。末期腎不全や透析例は除外されている。平均年齢は61.6歳、女性は27.7%のみ。平均体重は96.7 kgBMI平均は33.3 kgm2だった。推算糸球体濾過率(eGFR)の中央値は85 mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)中央値は7.4 mggCr86.6%が「<30 mggCr」だった。

【方法】

これら1万7604例はGLP-1-RA群(セマグルチド2.4 mg/週)とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。今回の事前設定追加解析では、5つの評価項目を併合した複合腎イベントの発生リスクが比較された(①腎疾患死、②透析/腎移植、③eGFRが「恒常的に15mL/分/1.73m2未満へ低下」、④eGFRが「開始時から50%以上低下」、⑤持続的顕性蛋白尿出現)。

【結果】

中央値182週間の観察期間後、上記「複合腎イベント」リスクはGLP-1-RA群で有意に低下していた。対プラセボ群ハザード比 (HR)は0.7895%信頼区間[CI]:0.630.96)、NNT250だった。

内訳を見ると、GLP-1-RA群における相対リスク減少が最も大きかったは「50%以上のeGFR低下」(HR0.57)だった。またイベント数が最も多かった「持続的顕性蛋白尿出現」の、GLP-1RA群におけるHR0.80 (95%CI0.641.00)だった(1.6 vs. 2.0%)。

これらGLP-1-RA群における「複合腎イベント」抑制は、人種や開始時eGFRUACR、体重、BMIの高低を問わず一貫していた。

なおGLP-1-RA群のeGFRは、開始当初に一過性の低下を示したのち回復するという、いわゆる「イニシャル・ディップ」を認めた。

SELECT試験は、Novo Nordiskによる資金提供を受けた。同社は試験デザイン、データの収集、解析・解釈、また原稿準備とレビューにも関与した。ただし論文投稿の最終決定は全著者が責任を負った。

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