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脊髄血管障害[私の治療]

No.5228 (2024年07月06日発行) P.39

亀山 隆 (中部ろうさい病院脳神経内科部長)

登録日: 2024-07-04

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  • 脊髄血管障害は脊髄梗塞と脊髄出血にわかれ,脳血管障害に比べて稀である。
    脊髄梗塞の代表的病型は前脊髄動脈症候群で,後脊髄動脈症候群はさらに稀である。脊髄梗塞は,前脊髄動脈や後脊髄動脈の閉塞というより,その親動脈である大動脈や椎骨動脈の病変(アテローム硬化,動脈解離,大動脈手術など)によって生じることが多い。若年者の軽微な外傷を契機に発症する脊髄梗塞では,椎間板の微小な線維軟骨成分が血管内に入って塞栓をきたす機序もある(確定診断は困難)。
    脊髄出血は髄内出血,くも膜下出血,硬膜外血腫,硬膜下血腫に分類される。病因としては,海綿状血管腫,動静脈奇形,腫瘍,血液疾患,抗凝固薬,外傷,腰椎穿刺,特発性などが挙げられる。髄内の小出血は海綿状血管腫による場合が多く,出血を繰り返して階段状に増悪する。

    ▶診断のポイント

    脊髄梗塞の病型のひとつである前脊髄動脈症候群は,背部痛とともに四肢麻痺または対麻痺で突然発症し,膀胱直腸障害,病変レベル以下の解離性感覚障害(温痛覚のみ障害され,触覚・深部覚が保たれる)が特徴で,遅くとも数日以内に症候が完成する。後脊髄動脈症候群では深部感覚障害と感覚性運動失調を主徴とし,錐体路症候を伴うこともある。

    脊髄梗塞では超急性期にMRI拡散強調画像で梗塞巣が描出されることもあるが,画像で十分診断できないことがあり,突発完成の発症様式と特徴的症候から疑うことが重要である。加えて,原因となる大動脈病変などの検索も行う。

    また,亜急性から慢性進行性の脊髄障害を呈する脊髄硬膜動静脈瘻は,中高年男性に多い。その病態は脊髄の静脈性循環障害で,脊髄の静脈うっ血・浮腫から静脈性梗塞に至る。胸腰髄に好発しMRIで上下に長い髄内T2高信号と脊髄腫脹を呈し,脊髄炎や髄内腫瘍との鑑別が問題となる。MRIでのくも膜下腔の異常血管によるflow void所見が診断に重要で,確定診断には脊髄血管撮影が必要である。

    脊髄出血の診断にはMRI,特にT2強調画像が有用である。脊髄硬膜外血腫は頸椎~上位胸椎レベルの脊髄後外側に出現することが多く,この場合,急性発症の後頸部から肩の疼痛と片麻痺を呈し,脳梗塞と誤診されやすく,注意を要する。血腫はCTでも脊柱管内の高吸収域として検出され,診断は可能である。

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