(1)非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
(2)神経障害性疼痛治療薬
(3)オピオイド鎮痛薬
(4)セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」によると,2020年度高齢化率の世界トップ3は,日本(28.6%),ドイツ(21.7%),フランス(20.8%)であった1)。いずれの国もいわゆる先進諸国であり,バリアフリー化した建物が多いなど,高齢者が暮らしやすい国づくりを行っていることが特徴である。また65歳以上の者がいる世帯については2021(令和3)年時点で2580万9000世帯と,全世帯(5191万4000世帯)の49.7%を占めている。1980(昭和55)年では世帯構造の中で三世代世帯の割合が一番高く,全体の半数を占めていたが,2021(令和3)年では夫婦のみの世帯および単独世帯がそれぞれ約3割を占めており,65歳以上の1人暮らしの者は,男女ともに増加傾向にある。高齢者のみの世帯が増加している令和時代において,腰痛は日常生活に非常に支障をきたす。交通の便が良い都市部では公共交通機関で移動できるが,地方であれば自分で車等を運転して移動することが必要になることも多い。
高齢者腰痛の原因で多い脊柱管狭窄症が進行すると,間歇性跛行のため信号が変わる前に道路を渡れなかったり,立位保持困難であると,炊事をする際シンクに上腕で体を支えなければ,料理をつくることができなくなったりする。しだいに外出も減り,社会的孤立にも陥りかねない。そうなるとますます疼痛に過敏となり破局的思考にも陥りやすく,便秘や下痢,睡眠障害といった自律神経障害,そして疼痛の慢性化のみならず,認知機能障害にも陥りやすい状況になる(図1)。加齢に伴い生活習慣病も増え,通院回数,薬剤の種類,総内服数も増えるであろう。整形外科でよく処方される鎮痛薬と内科治療薬剤等とが相互作用を起こす可能性もあり,高齢者腰痛治療においては診断から処方まで,若者と同じように考えていてはいけない点が多い。
本稿では,筆者が臨床を通じて実践している高齢者腰痛治療についてお話しする。