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アデノウイルス感染症[私の治療]

No.5230 (2024年07月20日発行) P.36

澤 友歌 (東邦大学医療センター大森病院小児科)

登録日: 2024-07-18

最終更新日: 2024-07-16

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  • アデノウイルスは7種(A~G),57以上の型(51種類の血清型および52以降の遺伝型)に分類される1)。感染したウイルスはリンパ節や扁桃で増殖するが,ウイルスの型により様々な病状を呈する。感染後も数週間~数カ月便中に排泄される。アデノウイルスはエンベロープを持たないため,環境中でも安定性が高く,アルコール消毒の効果が弱い。感染力が強いので,家庭内,種々の施設内での感染拡大に注意が必要である。
    扁桃炎(1~7型)2):小児に多く飛沫感染する。高熱が7~10日間続き,咽頭・扁桃の発赤を認め,白苔を伴うことがある。乳幼児では,病初期に熱性痙攣を起こすことがある。血液検査では炎症反応が高値となる。全身状態は比較的良好だが,病後期には消耗による脱水症状をきたすことがある。
    下気道感染症(1~5,7,14,21,55,56型)2):小児に多く飛沫感染する。乳児の7型による重症肺炎は急速に症状が進行して致死的になることが知られているが,1~3型でも間質性肺炎に伴う低酸素血症から重症管理が必要なことがある。呼吸努力がみられる場合は,小児科医のいる入院施設での管理が望ましい。下気道感染症でみられる発熱や咳嗽は7日間前後の経過で改善する。
    流行性角結膜炎(8,11,19a,37,53,54型)2):小児および成人でみられ接触感染する。7日間程度の潜伏期間を経て,眼球結膜充血,眼脂,眼痛がみられる。発熱は稀で,症状は2週間程度で自然軽快する。片側性に発症するが,後に反対側にも感染することが多い。回復期に点状表層角膜炎により視力低下をきたすことがある。「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)の5類感染症の定点把握疾患。学校保健安全法第3種に指定されており,医師が感染の恐れがないと認めるまで出席停止。
    咽頭結膜熱(3,7型)2):小児で多く,飛沫および接触感染する。夏場にプールを介して流行するため,プール熱とも呼ばれていた。弛張熱,咽頭発赤,頸部リンパ節腫脹に加え,眼球結膜充血,眼脂を認める。感染症法の5類感染症の定点把握疾患。学校保健安全法第2種に指定されており,主要症状消退後2日を経過するまで出席停止。
    消化管感染症①(31,40,41型)2),②(1,2,5,6型):①は早期乳児でみられる。症状は下痢が主体で,7~10日間程度で自然回復する。経過中の脱水症に注意する。
    ②は乳幼児に多い。腹痛,腸間膜リンパ節腫脹がみられる。気道感染症が先行することがある。虫垂炎との鑑別を要することがある。腸重積症の原因の約30%を占める。
    出血性膀胱炎(7,11,21,34,35型)2):小児でみられ,男児が女児よりも2~3倍多い。排尿時痛を伴う肉眼的血尿が3日間程度持続し,10日間程度で潜血も改善する。発熱はみられない。
    その他の感染症:脳炎・脳症,心筋炎,横紋筋融解症などの原因としても知られる。骨髄移植後では全身臓器,HIV患者では消化管や泌尿器で,アデノウイルス持続感染症をきたすことがある。2022年4~7月に欧米を中心に小児の重症急性肝炎症例が複数報告され,アデノウイルスおよびアデノウイルス随伴ウイルスの関与が疑われたが,結論には至っていない。

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